インスリン抵抗性が高まったりインスリンの分泌が低下したりして、血中の糖がなかなか細胞に取り込まれないと、すい臓は「もっともっと糖を取り込むように!」と頑張ってたくさんのインスリンを分泌します。そうすると、次第にすい臓が疲れていって、インスリンの分泌も悪くなってしまう。そうして、糖尿病の末期にはインスリンがほとんど出なくなるので、インスリン注射が必要になっていくのです。

糖質の多い食事は血糖値を上げる

ですから、「なぜ血糖値が上がるのか」といえば、糖質の多い食事を摂っているから。そして、インスリン抵抗性が高まって、血糖値をスムーズに正常値まで戻すシステムがうまく働いていないからです。

血管内の赤血球と血糖のイメージ
写真=iStock.com/iLexx
※写真はイメージです

では、インスリン抵抗性はなぜ起こるのかというと、いろいろな原因が絡み合っています。体質的にインスリン抵抗性が起きやすい人もいますし、肥満や運動不足、高脂肪食、ストレスも原因になります。

ストレスを少しも感じていない人なんていないでしょうし、若い頃よりも体重が増えた人、肉食中心でつい脂肪の多い食事になりがちな人も多いでしょう。また、「運動は十分にやっています」と自信をもって言える人は、どれだけいるでしょうか。

インスリン抵抗性というのはすごく身近な問題で、食後に血糖値の急上昇を起こす人にはこのインスリン抵抗性があることがほとんどです。

糖質を摂取し続けると血糖値は上がらなくても太る

インスリン抵抗性にしても、耐糖能(血中に糖が増えたときに正常に戻す力)にしても遺伝的な体質にも依るので、炭水化物をたくさん食べても血糖値は大して上がらない、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー/2~3か月の血糖値の平均を表す指標)も低いまま、という人もいます。

たくさんの患者さんと接していると、「ごはんは必ずおかわりしてしまいます」「ラーメンが好きで、よく食べています」なんて話しつつ、HbA1cは5.3%程度(正常範囲)という、非常に糖負荷に強い方もいらっしゃいます。そうした患者さんの話を聞いていると、血糖値が上がりやすい体質をもつ自分としては、正直羨ましいなと思います。

そういう人は、血糖値という観点のみで見れば、そこまでタイトに食事を制限したり、甘いものをがまんしたりする必要はありません。

でも、「たくさん糖質を摂って、インスリンをたくさん出して、血中の糖をどんどん細胞内に取り込んでいく」ことを繰り返していれば、たとえ血糖値は上がらなくても、太っていきます。なぜなら、エネルギーとして使われない余分な糖は、最終的には中性脂肪につくりかえられるからです。