胃腸が弱いのに炭水化物が大好きでメタボだった胃腸科医の福島正嗣医師は、糖質制限を始めて2カ月で10キロやせ、それまでの体調不良がなくなったという。患者さんたちも胃もたれや下痢、逆流感、片頭痛などの不調が改善したという、健康寿命を延ばすための食事術とは――。

※本稿は、福島正嗣『朝食にパンを食べるな』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

医師のくせに炭水化物中毒に気づかなかった

私は胃腸科の専門医を30年近く続けているのですが、恥ずかしながら10年前までは、軽度の肥満と脂質異常症を抱えていました。

その頃は、空腹を感じるときには1日4食だった時期もあり、身長172センチで体重は72キロと、メタボリックシンドロームの状態でした。

それ以外にも、胸焼けや偏頭痛、年に数回ある激しい胃痛も抱えていて、胃酸を抑える薬を常備して、それを服薬することでまぎらわしていました。

それらは若い頃からの症状だったので、「人生そんなものだ」という認識だったのです。肥満になってからは、階段を降りるときに膝に痛みが出るようになったのですが、それも40代という年齢のせいにしていました。

当時の私は、朝の仕事が忙しくなければパンを食べ、昼はご飯てんこ盛りの定食かうどん、パスタ。夕食は一人でも食べられるラーメンか、お酒を飲みながらつまみという生活でした。

当然、小麦を摂取しない日はありません。糖分が足りなくなったと自覚したときは清涼飲料水を飲んだり、せんべいを食べたりしていました。

世間一般で考えると、それほど非常識な食生活ではありませんが、今考えると朝からパンを食べることにより、炭水化物を食べ続ける無限ループにはまっていたのです。

腹痛に苦しむスーツを着た中年男性
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メタボの胃腸科医が糖質制限で目からウロコ

そんな折、傷の湿潤しつじゅん治療で有名で、友人でもある夏井まこと医師が、糖質制限と呼ばれる糖尿病治療食を始めたと知りました。それを機に、私自身も糖質制限食と出合い、人生が大きく変わることになります。

糖質制限というのは、炭水化物のうちエネルギー源となる糖質の摂取を制限することで、糖尿病をコントロールする食事療法です。京都・高雄病院の江部えべ康二医師が提唱している新しい概念の糖尿病治療食として、近年注目が高まっています。

当時の医療では、食事による摂取カロリーが消費カロリーを上回った場合に肥満とされ、その先に糖尿病があるという考え方でした。そのため、私も最初は、糖質だけを制限して糖尿病がコントロールできるのかは、疑わしいと感じていました。

「薬なしの食事療法だけで糖尿病が改善したら、そもそも医療や製薬会社なんていらないだろう」と。

とはいえ、「そういう意見があるのなら、とりあえずやってみよう」というのが私の主義です。手始めに、夜の炭水化物をやめてみることにました。夕食は豚のソテーとキャベツというメニューに決めて、継続しました。

ほんの軽い気持ちで始めた炭水化物制限でしたが、毎日、脂が多い豚肉(脂身も残さず食べていました)を食べた私の体に、急激な変化が現れたのです。

前述したように、当時の私は軽度の肥満と脂質異常症を抱えていました。ところが、糖質制限に取り組んで2カ月で、体重が10キロと、中性脂肪が160mg/dlから26mg/dlまで減少したのです。

本当に驚きました。

それまでカロリー制限をしてもよくならなかった肥満と脂質異常が改善しただけでなく、胃腸の調子までよくなるというおまけまで付いてきたのです。