「死ぬ間際の自分でもその行為に同意してくれるか」

そこで、日々の選択の際に考えてほしいのが、「今行っている選択は、将来の自分も同意してくれるのか」です。

私は、循環器内科の医師として、心筋梗塞などを起こして救急車で病院に搬送されてくる患者さんたちと日々接しています。そして、これまでの自身の選択を後悔している人もたくさん見てきました。

何を食べるか、どのくらい食べるか、タバコを吸うか、空いた時間に何をするか……といった日々の選択は、選択しているという意識もなく、流れるようにしているのかもしれません。でも、少し立ち止まる瞬間があれば、10年後、20年後、30年後の自分が、その選択に対して「オッケー」と言ってくれるか、考えてほしいのです。

あるいは、死ぬ間際の自分が同意してくれるか、でもいいと思います。

たとえば、医者からは禁煙を勧められているけれど、タバコを吸い続けているとします。その選択に対して、死ぬ間際の自分も「自分にとってタバコはすごく大事だから、もしタバコが原因で人生が短くなったのだとしても私は後悔しないよ」と思うだろう、と考えるのであれば、その人にとっては決して間違った選択ではありません。

長い人生の中の自分の優先順位を書き出してみる

ちょっと大げさですが、将来の自分と合意形成ができるのなら、それはそれで良いと思うのです。

生活習慣病対策というのは、「○○はやめましょう」「○○は控えましょう」「○○を摂りましょう」などと、得てしてきれいごとを並べるようなものになりがちです。

そのすべてをパーフェクトに守ることなんて、まずできません。私自身もできませんし、患者さんにそれを勧めたところで机上の空論に終わります。だから、パーフェクトである必要はないと思います。

ただ、「自分が将来どんな日々を送りたいか、どんな人生を歩みたいか」を見つめて、熟考する時間をもち、そのためには今の自分はどんな選択をしていくのか――。そう考えることは必須だと思います。

浅野拓『健康寿命を延ばす「選択」』(KADOKAWA)
浅野拓『健康寿命を延ばす「選択」』(KADOKAWA)

そのためには、長い人生を見通したうえで、自分の優先順位を書き出しておくといいでしょう。健康、仕事、家族、友人、趣味、休暇、お金、地位、使命――。自分が何をいちばん大事にしたいのか、どんな順番で大事にしたいのか、漠然と考えるだけではなく、これもまた書き出して見える化しておくことをおすすめします。

そして、些細なことでも日々の選択で迷ったときには、自分の優先順位を思い出し、「今しようとしている選択は自分の本心に合致しているか」と考えるのです。

多くの人は、健康を優先順位の上のほうに置くでしょう。それは、仕事をするにも、趣味や休暇、家族や友人との時間を楽しむにも、やっぱり健康がベースになるからです。

では、将来の健康を守るには今どんな選択をしていくのか。それを考えるには「高血圧や高血糖を放置するとどうなるのか」「喫煙を続けるとどうなるのか」といったことがハッキリ見える化できていないといけません。

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