鉄剤を打ちすぎて内臓ボロボロで走れなくなる

なかにはお菓子など間食をしていないか、ごみ箱をチェックする指導者もいるというから、選手たちのストレスは半端ではない。それどころか、指導者が選手の体形のことをからったり、なかには裸で体重計に乗せられていたというチームもあったようだ。

友人とご一緒にランニング
写真=iStock.com/stevecoleimages
※写真はイメージです

近年は体脂肪率などが測定できる体重計(体組成計)が普及しているが、いまだに「体重」がターゲットのままだという。

それはなぜなのか。ボディが軽いほうが速く走ることができるからだ。過度な体重制限は貧血や骨の強度にも影響してくるが、それは「鉄剤」でカバーする。サプリメントでの補給は当たり前で、なかには注射で投与するチームもある。あまり明るみに出ることはないが、「鉄剤を打ちすぎて、内臓がボロボロになって走れなくなってしまう選手もいます」と元選手は打ち明けた。

一方で女性は体脂肪率が15%を割り込むと月経不順が増え、10%以下になると無月経になりやすい。月経不順や無月経になると、骨がもろくなり、疲労骨折などが起きやすくなる。それなのに、指導者は選手の体重を徹底的に管理する。女子ランナーはそんな“矛盾”と戦いながら、水すら我慢して競技を続けている。

水分摂取が十分でないと、当然だが脱水症状になりやすい。老廃物が体内に残りやすく、疲れもとれない。スポーツ選手にとっていいことは何もないどころか、その状態でハードな練習を続けるのは非常に危険だ。それでも選手たちは水を飲むのも躊躇するような状況に追い込まれている。

鉄剤については、日本陸連が2018年12月に「鉄剤注射原則禁止」を打ち出した。さらに日本陸連は昨年2月にアスリートの身長・体重を非公開にすると発表。情報の収集も控えるように通達している。これは身長・体重を非公表とすることで、女子アスリートの過度な体重制限の防止と鉄剤注射の根絶につなげようという狙いもあるのだ。