「見返してやる、絶対に勝ってやる」

普通なら、ここで諦めるだろう。だが、岡山の場合は違った。当時をこう振り返った。

「本当に悔しかったですね。でも悔やんでも仕方ない。気持ちを切り替えて、『東農大の陸上部には負けない』『見返してやる、絶対に勝ってやる』という気持ちでした。そのときに、自分はチームにいるとケガをしてしまう傾向があるから、ひとりで自分のペースでやってみようと決断したんです」

高校時代は朝練習で10kmをキロ4分ペースで走り、大学でも朝から10km以上を走り込み、授業後に本練習を行っていたという。その結果、故障に苦しんできた岡山は練習スタイルを大幅にチェンジした。参考にしたのが当時、「公務員ランナー」として大活躍していたプロランナーの川内優輝(あいおいニッセイ同和損害保険)のトレーニングメソッドだった。

「川内さんに憧れていたので、練習メニューなどを参考にして、2部練習から1部練習に変えたんです。すると全然ケガをしなくなって、身体も軽くなり、動き始めた。5000mもすんなり15分切れちゃったんです。自分でもビックリしましたね」

朝の時間や授業のスケジュールに合わせるかたちで、1日1回のトレーニングで岡山は急成長した。大学3年(2015年)の4月には佐渡トキマラソンで初マラソンに臨み、2時間37分16秒で優勝。“市民ランナー”として大活躍を続けることになる。

川内を真似して連戦にもチャレンジした。2015年10月から11月にかけては6週レースに挑戦。つくばマラソン(2位/2時間25分00秒)、富士山マラソン(3位/2時間28分20秒)と2週連続でフルマラソンにも出場した。

「マラソンでオリンピックを目指そう。そう思ったんです。大学生は(1区間約20kmの)箱根駅伝を目標にしているので、先にマラソンを経験できるのはアドバンテージになる。大学生のうちにマラソンをいっぱい走れば、経験では負けないんじゃないかと思ったんです」

 
  初のウルトラレースで“日本代表”をゲット(写真=本人提供)

自分はこの方法しかない、と信じつづけて、ひとりで練習を続けた岡山は大学4年時にサイパンマラソン(2時間42分12秒)と新潟シティマラソン(2時間26分10秒)を制すと、地元・熊本城マラソン(2時間22分45秒)でも優勝。ローカルレースで数々の記録を打ち立てた。ただ、就職活動はうまくいかなかった。

「大学卒業後は実業団で競技を続けたいと思っていたんです。でも、自分でいろいろ連絡してお願いしたんですけど、全然ダメでした」