売上高は上がったが、利益率は下がった

クスリのアオキの売上高の伸びを支えたのは食品であることは次のグラフからはっきりと見て取れます。

【図表3】売上高と食品構成比の推移(2018~2022)
同社IRデータより筆者作成

食品の売り上げ構成比の高まりに比例して、売り上げが増えてきているのがわかります。食品はなくてはならない部門です。しかし、この流れが会社の利益率に影響を及ぼし始めているのも事実です。

【図表4】売上高と営業利益率の推移(2018~2022)
同社IRデータより筆者作成

2020年に3000億円の売り上げを突破したのと同時に、営業利益率が落ち始めています。22年度は4.3%と13年5月期以来、5%を割り込んでいます。企業として5000億円を突破することは当面の目標ですので規模の追求は続きますが、その後を見据えると規模だけでなく質の追求にシフトすることが企業命題なのです。

調剤薬局の併設を進めているワケ

売り場の中央に立って売り場面積配分を見ると、薬と日用品などの売り場と食品売り場がほぼ半々。しかし、売り場をぐるっとまわって最後の売り場にあるのが調剤薬局コーナーです。

調剤薬局
筆者撮影

ドラッグストア業界において、いま調剤併設は大きなテーマとなっています。

業界トップはスギHDの85%、ウエルシアが79%で続き、アオキは50%台で3位です。

クスリのアオキは23年期末までに60%近くまで引き上げ、26年5月までには調剤併設率70%を目標に掲げています。これをスムーズに進行させるために、以前から新設店舗には調剤用スペースを設けていて、タイミングがきたら調剤を新規投資せずに併設できるように準備してきたと言いますから、かなり戦略的に取り組んでいると言えます。

新卒薬剤師も毎年100人以上の採用をしていて、薬屋としての存在感も強まっています。

医薬品の販売に強いドラッグストアとも、食品を強化している他のドラッグストアとも異なり、食品に強く地域のかかりつけ薬局でもある、ワンストップ型のフード&ドラッグという独自のポジションを築こうとしているのです。

食品スーパーのような顔をしていながら、実は医薬品に強い企業であり続けるというビジネスモデルです。

【図表5】クスリのアオキ 部門別売上高推移(2018~2022)
同社IRデータより筆者作成

今や売り上げの42%は食品が占めていますが、薬と調剤で22%程度にまで高まっていて伸び率(22年/18年)だけで言うと、食品よりも調剤の方が高いのです。

調剤を伸ばすと利益率も高まります。一方で、食品の構成比が上がれば上がるほど粗利率は下がります。このバランスを適正な数値に戻していこうという考えが強まっているのだと思います。

そのための施策が調剤併設率70%なのです。