食品を強化するきっかけ
クスリのアオキの前身となる薬局は明治2年に創業しています。
1軒の薬局から始まり、それを青木桂生会長が株式会社化したのが1985年です。当初からドラッグストアとして店舗の効率化・標準化を進めていました。その中で、食品も早い段階から扱いがありました。ただ、2010年ごろまでは食品は全社売り上げの20%に満たない構成でした。
それを大きく変えたのが、青木会長の長男で、14年にトップに立った現社長の青木宏憲氏です。
2010年に上場来初の赤字に陥り、既存店の立て直しに立ち上がったのが、当時、営業本部長だった青木宏憲氏です。営業推進室を設置し、他チェーンに先駆けて調剤部門のテレビCMを始め、同時に食品の強化を本格的に進めていきました。
こうした改革により既存店の売り上げが伸び、企業としても11年に東京証券取引市場第一部に指定され、再成長がスタートしました。この頃から食品の売り上げ構成比が増え、20%だった売り上げ構成比が10年間で40%を超える(22年時点 42.4%)までに拡大したのです。
いきなり食品を強化したのではなく、徐々に地域のお客さんにとって日常的に必要な商品から仕入れ、着実にアイテムを増やしていきました。これが食品に強いクスリのアオキの独自性につながっています。
全国チェーンに対抗するために行ったこと
21年7月に発表した第3次中期経営計画(22年5月期から26年5月期)の中で3つの重点施策を打ち出しています。
① フード&ドラッグへの転換を目的とした主力フォーマットの変更
② 調剤併設率向上
③ ドミナント強化(地域内でのシェアアップ)
この中で、もっとも強化しているのが「①フード&ドラッグへの転換」です。
生鮮食品を充実させてワンストップで必要なものをすべて購入できる店へとグレードアップさせる施策です。
なぜこのような戦略を取り始めたのか。それは地域別シェアを見るとわかります。
売り上げのおよそ半分を占めるのは地元・石川県を中心とした北信越地区です。しかし、地元の売り上げの伸び率は110%と他エリアと比べると伸び率は低くなっています。
出店できるところに出尽くしたこともあるでしょうが、それ以上に、同業他社であるスギ薬局やコスモス薬品、ウエルシアなどの出店が増えているのです。
そこで、全店の4分の1程度の既存店200店舗をリニューアルすると22年7月に発表しました。その半分は本社のある石川県などの北陸3県の店舗です。
新規出店は90店舗と前期比1割程度少ない出店にし、既存店の改装でもともとの地盤の北陸でのシェアアップを狙っています。これらの店は出店時期が古く、小型店(売り場面積1000m2以下)が多いという特徴もあります。
そこで、これまで中・大型店で取り組み、成果をあげてきた生鮮食品強化を地元の小型店にも導入し、フード&ドラッグ業態へと転換し、売り上げを上げていこうとしています。
これによって日常生活に必要な物はワンストップで買えるという「フード&ドラッグチェーン」への業態転換が可能となるのです。結果的に他社との差別化につながり、重点戦略③の地域内シェアを上げることができると読んでいます。