「仕事帰りの一杯」敵の悪口を吹き込め!

これまでの作業を進めながら、警備隊長が落ち着くために行うべき、もう1つの重要な作業があります。それが「味方工作」です。

平たく言うと、相手の悪口や愚痴を他者に言うこと。

下園壮太『自衛隊メンタル教官が教える イライラ・怒りをとる技術』(朝日新書)
下園壮太『自衛隊メンタル教官が教える イライラ・怒りをとる技術』(朝日新書)

世の中には、「人の悪口を言ってはならない」「愚痴をこぼしてはならない」といった価値観もあります。確かに、悪口は耳にするのも嫌だし、愚痴ばかり言っている自分にも幻滅する部分があります。また、悪口が回りまわって相手に伝わり、外的エスカレーションが生じる場合もある。だから、「悪口は言わない」という戒めがあるのです。

ただ、これは、人が作った倫理の規範。その証拠に、多くの人が何か不当な扱いを受けたとき、周囲に「こんな扱いをされた」と訴え、ときには怒りの声を上げ、クレームをつけます。そちらのほうが自然だからです。

また、原始人で考えてみましょう。

原始人の戦いは、命の取り合い。武器が発達していない時代は、人間の数が勝敗を左右します。今後、大きな戦いに発展しそうだというとき、味方をたくさん作らなければ、警備隊長は安心できないのです。

味方を作るには、「自分はいかに不当に攻撃されたか」「相手はいかに邪悪か」「今後どんなひどいことをしてきそうなのか」などを話し、同情を得ます。同時に良いアドバイスや情報を得るのです。

だから、「この無念さ、くやしさ、痛さをわかってほしい」と思い、多くの人に訴えることは、決して恥ずかしいことではないのです。ほかの人にことの顛末を聞いてもらったり、愚痴を聞いてもらったりする行為は、無意味ではなく、心にとって大変効果のあることなのです。本当に味方になってくれる人が現れると、警備隊長の心は、スーッと落ち着けるのです。

心の武装解除が進むでしょう。「仕事帰りの一杯」は、昭和のサラリーマン的だと揶揄されることもあるようですが、それなりの必要性と効果があったのです。

「愚痴」は相手を選んで

補足ですが、愚痴を言う相手は、信頼できる、口が堅い人を選びましょう。

原始人の戦闘的に見ても、愚痴は逆に言うと「弱み」情報でもあります。愚痴を言う相手を間違えると、こちらの弱みを敵に伝えられ、一気に戦況が悪くなります。あなたの周りには、敵に通じるスパイがいるかもしれません。愚痴や悪口は控えろ、という処世術は、このあたりからもきています。

テーブルの上にコーヒーのカップを保持している女性と男
写真=iStock.com/fizkes
※写真はイメージです

日ごろから、愚痴を言い合える信頼できる人間関係を築いておきたいものです。ただ、それが難しいのも現代の特徴。その場合は、プロのカウンセラーを活用することも考えてください。カウンセリングスキルは優劣が大きくても、「秘密を他言しない」ということは、ほとんどのカウンセラーが守ってくれるはずです。

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