理性の声③「思い出したらやらかしてしまうかも…」
思い出すと苦しい。だから止めたい。しかも、敵の悪意を考えていればいるほど不安になり、行動に移したくなる。せっかく我慢して外的エスカレーションを避けたのに、ダメにしてしまう、という理性の危惧です。
実際に、思い返しをして、それで感情的なメールを出してしまいトラブルを大きくしたという事例もあります。
だからこそ、それができにくい安全な環境で行うことが大切です。また、衝動が大きくなったら、呼吸したり、体を動かしたり、イメージを使って過剰に発動する感情を落ち着ける作業を練習しておく必要があります。そして少し冷静になったら、「感情のケアと現実問題対処は別」ということを思い出しましょう。
目を離せば怒りは続く…敵はしっかり監視すべし
対応シミュレーション作業と同時(同じぐらいの時期)に進むのが、敵の監視です。戦場においても、敵から目を離すことが一番危険なことなのです。敵がどこにいて、何をしようとしているのか、「KEEP CONTACT(敵と接触し、目を離すな)」は、私が自衛隊幹部時代に、実戦豊富な米軍の将校から何度も聞かされた言葉です。
嫌なことがあったとき、相手のことが頭から離れないだけでなく、相手に関する情報を第三者やネットから集めたくなるのは、実は自然な行為なのです。
もし、翌日でも遭遇することがあれば、嫌な人ですから、できるだけ距離は取りたいものの、目の端々でずっと監視してしまうのも原始人的には正しい反応なのです。きちんと監視できていれば、敵の情報を当面の防御プランに反映できます。
また、この監視を続けているからこそ、「しばらく注目しているが、どうも敵は攻撃してこなさそう」ということがわかり、怒りが収まっていくのです。これが怒りが収まる適正プロセスです。
ところが、「忘れる対処」(我慢して、なかったことにする、あえて無視する)をしていると、この情報収集をしないことになってしまいます。たとえある程度の時間が経っても、「もしかしたら、敵は着々と悪意を増幅し、攻撃準備を整えているだけかもしれない。なのに自分はそれを確認していない」と、心の奥底の警戒心を解けない状態が続きます。