「日本では顧客に対して上手にアピールできていないケースが多い」。セブン&アイグループで発行している「四季報」という広報誌で私は対談を担当しています。09年、アートディレクターの佐藤可士和さんと対談をさせていただきましたが、印象に残ったのは「表現力」についての佐藤さんの指摘でした。自分たちが提供する価値をどのように表現すれば、顧客の心をつかめるか。
例えば、顧客のところへ商談に行き、値引きの話になったとします。自分なりにコストダウンのアイデアをひねり出し、値引き案を考えます。しかし、競合も同じように値引き案を提示していたら、どうするか。トークのうまさくらいでは、先方の選択の基準にはならないでしょう。このとき、値引きを別の形で表現できないかと考えてみる。同様の問題を不況下でわれわれも抱えていました。そこでイトーヨーカ堂で他社に先がけて、大ヒットしたのが現金下取りセールです。衣料品のお買い上げ金額に応じて、顧客の不要になった衣類や家庭用品を一定金額で下取りする。理屈上は値引きと同じで、お買い上げ金額5000円ごとに1点1000円で下取りすれば、実質は2割引きです。むしろ、下取り品を持っていく手間もかかります。
しかし、顧客にとっては、タンスの中で眠っていても、捨てれば損する気がして捨てられなかった服に新たな価値が生まれる。
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