「感情の老化」の原因3つ

感情の老化の原因は、おおむね次の3つが考えられます。

原因1:前頭葉の老化

思考や意欲、感情、理性など、人間らしい振る舞いを司っているのが前頭葉です。前頭葉が活発に機能していると、アクティブで若々しいのです。ところが残念なことに、脳の中でも早くから萎縮が始まり、神経細胞の減少が起きるのが前頭葉。老化をもたらす大きな要因になっています。

原因2:動脈硬化

年齢とともに多かれ少なかれ、血管の壁にはコレステロールや中性脂肪などが沈着して厚くなっていきます。そうして血管が狭くなり、血液が流れにくくなった状態が動脈硬化です。

動脈硬化を起こしている人の脳は、自発性の低下や、泣き出すと止まらなくなるなどの「感情失禁」が起こりやすくなります。自分から行動することが少なくなり、感情に振り回されやすくなります。さらに悪化すると、脳の血管が詰まって脳血管性の認知症へつながる前段階になってしまうのです。

動脈硬化の危険因子として判明しているのが、糖尿病とタバコです。さらに高血圧、コレステロール、肥満、ストレス、性差(男性)、加齢などが挙げられます。

動脈硬化はいわゆる生活習慣病として、狭心症や心筋梗塞などの心臓病、脳卒中のような脳血管障害のリスクを高めるとよくいわれますが、感情の老化を引き起こすことも強調しておきたいと思います。

中高年こそ肉を食べるべき理由

原因3:セロトニンの減少

脳内の神経伝達物質であるセロトニンは、ほかの神経伝達物質のドーパミン(喜び、快楽に関係)や、ノルアドレナリン(恐れ、驚きに関係)などの情報をコントロールして、精神を安定させています。

若い人でもセロトニンが一時的に減ると、うつ症状が出ることがあります。意欲低下、イライラ、体中がどこかしら痛いなどと訴えるなど、さまざまな不調が現われるのです。

これは多くの高齢者が診察室で訴える不調と同じです。歳をとると当たり前のことのように思われがちですが、実はこれも、高齢化にともなうセロトニン減少による、感情の老化現象の1つだと考えられます。

セロトニンを作る材料の1つは、肉類に含まれるトリプトファンという必須アミノ酸です。この点で中高年以降こそ肉類は食べたほうがいいといえるのです。