派閥にどっぷり漬かるのは危険
【池上】その経世会の話になると、私はNHK時代を思い出すんですよ。当時、報道番組部長時代に「ニュースセンター9時」「NHK特集」をスタートさせたシマゲジこと島桂次という会長が君臨していて、その下に週刊誌に「エビジョンイル」と書かれた「辣腕」の海老沢勝二がいました。
その海老沢氏があまりにも力を持ち過ぎたために、シマゲジがラインから外したわけです。そうしたら、海老沢氏の下の鉄の軍団が動いて、逆にシマゲジの追い落としに成功します。そこまでは良かったのですが、今度は2004年に制作費不正支出問題などで海老沢体制ががらがら崩れると、下にいた人々も生き残ることができませんでした。
実は、私も暗に「派閥」に誘われることはあったのですが、出世には興味がなかったので、結果的に「無派閥」だったことが奏功して、何の怪我もせずに済んだのですが。(笑)
【佐藤】だから、「社長派」や「専務派」にどっぷり漬かるのは、危険なのです。(笑)
【池上】それにしても、脳梗塞で倒れたこともありますが、田中時代の終わりは寂しいものがありました。
「鉄の結束」を支えているのは「利害関係」だけ
【佐藤】ロッキードで捕まった時にも、友達として助けてくれる人がいなかったでしょう。「鉄の結束」とはいっても、そこにあるのは利害関係です。ですから、今までのボスが弱ったとみるや、雪崩を打ってみんな新しいボスの下に去っていく。
【池上】さきほど「忠誠心を見ている」とおっしゃいましたが、そういう利害関係しか築けなかったのは、やはりボスの「責任」ですよね。いみじくも、かつて娘の田中真紀子氏が外務省幹部に向かって言い放った「人間には家族と使用人と敵の三種類しかない」という発想だったのでしょう。
【佐藤】相手にも、そういう本心はしっかり伝わりますから。付言すれば、そういうことを思っていても、口に出さないことが重要なのです。つい口走ってしまうところは、二世の限界と言うしかありません。