会社からの施しではなく、労働者が当然享受すべき権利
また、社内の法律である「就業規則」の改定や新しい規定を設ける場合は、従業員の過半数労働組合もしくは過半数代表者と協議し、その結果を従業員に周知するとともに労働基準監督署に届け出る必要がある。
逆に言えば、在宅勤務に関する支援や手当の支給がない場合、そのルールが就業規則に記載されておらず、テレワーク規定のないままに社員に負担を強いる企業は労働基準法89条違反ということになる。
読者のみなさんには、ぜひ自社の就業規則を確認してもらいたいが、仮に在宅勤務の負担を社員が負担する規定になっており、そのことを社員の誰もが知らなかった場合、これも周知義務に反し、労基法違反となり得る。
前出の厚労省のガイドラインには光熱費などについてこう記載されている。
「在宅勤務に伴い、労働者の自宅の電気料金等が増加する場合、実際の費用のうち業務に要した実費の金額を在宅勤務の実態(勤務時間等)を踏まえて合理的・客観的に計算し、支給することも考えられる」
つまり、就業時間と休憩時間、そして残業時間に要した自宅の照明やエアコンなどの電気代相当を企業が支給することを求めているともいえる。
少なくとも在宅勤務を原則とする企業や推奨している企業は在宅勤務手当を支給するべきだろう。
そうでなくても通勤定期代の支給を廃止し、出勤日の実費精算に切り替えるなど、会社の費用負担が減っている企業も多い。最低でも減少した通勤手当に見合う在宅勤務手当を支給しても損をすることはないだろう。
前出のLASSICの調査によると、テレワーク手当をもらっている人では「5000円未満」が20.6%、「5001円~1万円」が6.0%、1万円超は2.6%。5000円未満ではとても光熱費を賄うには十分ではない。
大手サービス業に勤務する社員(30歳)は、
「2020年のコロナ禍以降テレワークに移行している。通勤費はその都度の実費精算になったが、テレワーク手当は月額3000円。手当額以上に光熱費や通信費が増えており、社員の不満も高まっている」と明かす。
こうした不満を抱える企業も多いのではないか。
光熱費など物価が高騰する中、残業規制で残業代も減少している。自分たちの生活を防衛するためにも在宅勤務に要する費用を受け取るべきだ。
前述したように、このお金は会社からの施しや恩恵ではなく、働いている人が当然享受すべき権利だからである。