社員が望んでいるのに「テレワーク手当はない」70.8%

LASSIC(ラシック/東京都港区)の「テレワークによる家計への影響 2021年版」(2022年4月26日)によると、「テレワーク手当はない」と回答した人が70.8%に上っている。

2020年度は82.5%だったが、手当支給企業がわずかしか増えていない。

また、ロバート・ウォルターズ・ジャパン(東京都渋谷区)の「アフターコロナ時代の新しい働き方意識調査(2022年版)」(2022年4月13日)では、在宅勤務者が会社から受けた支援内容について聞いている。

「携帯電話、スマートフォン」(28%)、「PCラップトップ」(24%)が最も多いが、仕事に必要な機材であり、会社が貸与するのは当然だ。

しかし「電気代等の光熱費」の支援は17%、「オフィス家具(モニター机・椅子)の購入手当」の支援は14%にとどまっている。

さらに会社に受けたい支援のトップ3は「自宅・ネット環境に対する支援・手当」(65%)、「電気代等の光熱費」(62%)、「オフィス家具(モニター机・椅子)の購入手当」(61%)だ。

エアコン
写真=iStock.com/Viktor Chebanenko
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在宅勤務者が支援や手当を望んでいるのにテレワーク手当を受け取っていないと回答した人が7割もいるとは驚きだ。

なぜならコロナ感染拡大後の2020年に在宅勤務の負担軽減策として新たに「在宅勤務手当」を支給する企業が登場し、話題になったが、結果的に普及していないからだ。

しかも在宅勤務者の支援・手当は会社の“施し”ではなく、労働者が受けるべき当然の権利でもあるからだ。

雇用労働者に対して、会社が自宅を作業場所に指定している限り、オフィスと一体と見なされ、必要な措置を取ることが義務づけられている。労働者の賃金など権利を守る労働基準法(労基法)や健康と安全を守る労働安全衛生法は、在宅であってもオフィス・工場勤務と同様に使用者は遵守しなければならない。

さらに在宅勤務の支援や手当を支給していない企業は法律違反の疑いもある。労働基準法では労働者に情報通信機器、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合は就業規則に規定する必要がある(89条第5号)と定めている。

また、2021年3月25日の改定された厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」によると、この法律の条項の解釈についてこう述べている。

「テレワークを行うことによって労働者に過度の負担が生じることは望ましくない。(中略)費用負担の取り扱いは様々であるため、労使のどちらがどのように負担するか、また、使用者が負担する場合における限度額、労働者が使用者に費用を請求する場合の請求方法等については、あらかじめ労使で十分に話し合い、企業ごとの状況に応じたルールを定め、就業規則等に規定しておくことが望ましい。特に労働者に情報通信機器、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合には、当該事項について就業規則に規定しなければならないこととされている」

つまり、在宅勤務の経済的負担について使用者と労働者(労働組合など)が協議して決める、そして決めたルールを就業規則に盛り込むか、テレワーク規定を設ける必要があるということだ。