「2級市民」として生きなくてはならない少数民族

——現在の中国では「漢族は1級市民でウイグル族は2級市民」みたいな扱いが強いと感じます。

【熊倉】経済的な格差も政治的な地位もそうですね。たとえば、新疆の警官は、もっぱら少数民族によるテロを警戒してきたため、少数民族を潜在犯のように見なしがちです。少数民族の側からしたらこれは恐怖にほかなりません。ただ、漢族のほうにその感覚はないんです。ウルムチの街を歩いていて、自分がテロリストだと濡れ衣を着せられる心配はない。

1990年代後半以降、中国政府が新疆の民族運動を「テロ」と位置づけてから、少数民族の無力感や「自分は中国の主役ではない」という思いは強まりました。

法政大学の研究室にてインタビューに応じる熊倉潤氏
編集部撮影

――「テロリスト」というレッテル貼りは非常に残酷だと思います。当初用いられた「分離独立主義者」のほうが、相手は中国国家と別の考えを持つ人間だという認識があるだけマシでしょう。しかし「テロリスト」は、相手を思考力のある人間だとみなしていない。考えを理解する歩み寄りの余地が一切ない言葉です。

【熊倉】その通りですよ。しかも、どうして新疆の少数民族が「テロ」を起こすほど追い詰められたのか、誰がそこまで追い詰めているのかの批判的検討がないことも大きな問題です。

外国から謎のテロリズムという思想が入ってきて、それが新疆で発芽してテロ事件を起こしている、新疆にそういう土壌があるからいけないのだ……、という単純な認識から先には、想像が深まっていかない。共産党の無謬性の観点からいって「テロ」がなぜ起きたのか本当の理由を、中国が自分自身で解明することは非常に難しいと感じます。新疆の未来は、すくなくとも少数民族の目線から見るならば決して明るいとはいえません。

※本記事ではライターの安田峰俊の判断により、中華人民共和国の体制下で「维吾尔族」と定義された集団を「ウイグル族」、「汉族」と定義された集団を「漢族」と表記しています。

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