新疆ウイグル自治区では中国共産党による迫害が続いている。実際にどのような迫害が行われているのか。『新疆ウイグル自治区 中国共産党支配の70年』(中公新書)を上梓した法政大学の熊倉潤准教授は「ウイグル族など少数民族が『職業訓練センター』に強制収容されたと報じられているが、中国では“職業訓練”を必要とする少数民族への“援助”の一環だとされている。中国共産党は“善意”の政策であるかのように宣伝しているが、巻き込まれた少数民族にとっては悪夢でしかない」という。中国ルポライターの安田峰俊さんが聞いた――。

「ジェノサイド」に言及した理由

——新疆ウイグル自治区という敏感な地域について、あえて執筆された理由を教えてください。特に最後の章では、近年になり西側諸国で主張されている「ジェノサイド」(民族集団の計画的破壊)にも言及されています。

【熊倉潤(法政大学法学部 准教授)】世界的にこれほど話題の地域について、まとまった通史がない。ゆえに通史を書きたいという考えがありました。ジェノサイド問題についても、現代まで筆を進めるならば、なにも書かないのは逆に不親切だと思ったのです。さいわい私は思想的に自由な立場で、特定の勢力とのしがらみもありません。そこで、自由に書けるところまで書こうと考えました。

法政大学の研究室にてインタビューに応じる熊倉潤氏
編集部撮影
法政大学の会議室にてインタビューに応じる熊倉潤氏(右)

——日本のジャーナリズムがウイグル問題を論じにくい理由は「中国からの圧力」ゆえと勘違いされがちです。ただ、実際は政治問題とは無関係の属人的な問題がボトルネックとなり、多数の記者や編集部がうんざりして距離を置いてきたという別の要因が存在します。さておきアカデミックの世界の場合、また異なる事情がありそうですが……。

【熊倉】かつて1990年代後半、毛里和子先生(早稲田大学名誉教授)が大著『周縁からの中国』で新疆にも相当な目配りをなさり、王柯先生(神戸大学国際文化学部名誉教授)が未公開史料を大量に用いて『東トルキスタン共和国研究』にまとめました。なのに、その後の世代の研究者がこれらの業績に続こうとしてこなかったのは、ちょっと残念です。それもあって、私が書きたかったんです。