たとえば「あなた、何か悩み事はないの?」「とくにありませんけど」「いや、それは問題よ。悩みがないということ自体が、人間としておかしいんじゃない?」と、悩み事のない人に、わざわざ悩み事をつくってしまいます。

そして、マインド・コントロールの手法を駆使して、その悩み事を大きく強くします。その悩み事を相談し解決するには、私たちのグループに入ればいい、この人に帰依すればいいという方向に持っていくのです。

このプロセスで、悩みの原因は先祖の霊が取りついているからだ、このままでは結婚できない、必ず病気になってしまう、世界が破滅するときに救われないなど、根も葉もないようなことを吹き込んで不安感を煽ります。

強迫観念を植えつけて大きくし、不安や恐怖を煽ること。これは、問題のあるマインド・コントロールに見られる典型的なパターンなのです。

「強迫観念」と「依存心」で心を支配する

ある人の心の中で強迫観念が大きくなっていくと、マインド・コントロールする側は、それを打ち払って健全な自分を取り戻すには、占い師なり霊能師なり教祖なりに頼るしかない、という話を盛んに吹き込み、依存心を膨らめていきます。

紀藤正樹『決定版 マインド・コントロール』(アスコム)
紀藤正樹『決定版 マインド・コントロール』(アスコム)

教育ママでいえば「勉強しなければ、お父さんみたいになっちゃうよ」と子どもを煽って、「だから、ママの言う通りにしなければダメ。わかった?」と、子どもを自分に依存させるわけです。

こうして、自分以外の誰かに頼る依存心が膨らみ、自分でものを考えなくなっていきます。これも問題のあるマインド・コントロールの典型的なパターンです。

教育ママのケースであれば、いくら頑張ってみても、友だちや先輩に「おふくろさんなんて、適当にあしらっときゃいいんだ」などといわれた子どもが、依存心を振り払い、成長とともに自立していくのが普通でしょう。

マインド・コントロールする側は、そうならないように、依存心を何年も持続させることに力を注ぎます。

そのためには、子どもに“余計なこと”を吹き込んだ友だちや先輩のような存在を、できるだけ排除する必要があるでしょう。そこで、マインド・コントロールするときは、本人を両親や兄弟姉妹などの家族、あるいは友人から引き離すことが基本になります。

家族や友人と断絶させ、外部からの情報を遮断し、相談したり頼ったりできるのは霊能者や教団関係者だけという依存状況をつくってしまうのです。

「強迫観念」と「依存心」の二つは、いつもたいていセットになっています。これは問題のあるマインド・コントロールを見きわめる重要なポイントです。

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