私腹を肥やすために、社会の危機や混乱を利用している

ダボスマンは、危機が起きるたびに、自分の富を増大させる機会へと巧みに転じてきた。深刻な公衆衛生の危機や経済の混乱に乗じて、政府による救済の必要性を訴え、公的資金が注入されるごとに、そこから自分のふところに入ってくる仕組みを作ってきた。

ダボスマンの窃盗行為で、誰もが刺激を受けてきたという面はある。億万長者ポルノというべき物語を人々は喜ぶ。大がかりな誕生パーティー、戦利品である不動産の壮大な外観のチラ見せ、離婚条件のディテール、といったことだ。大衆は『ビリオンズ(※)のようなショーを視聴し、紆余うよ曲折の物語の中で、億万長者が奮闘するさまを目の当たりにし、この人も努力して相応の地位を得たのだろうと思い込むよう操作されている。

※ヘッジファンド投資家と規制当局の闘争を描いた米国のドラマ

しかし今や、我々が暮らす生態系全体をダボスマンの食欲が脅かしているといってよい。彼らの野放図な消費性向が何のとがめも受けないため、政治への信頼が失われ、世界中で人々の怒りとして噴出している。

右翼ポピュリストが世界中で増幅した真因は彼らにある

世界のあちこちでみられた右翼ポピュリスト運動の興隆について、背後で決定的に作用したのが、ダボスマンの絶え間ない略奪である。

こうした政治的変動はよく、得票目当ての政治家が、移民の大量流入や、これまで特権を享受してきた社会層の地位低下に焦点を当て、懐古主義やナショナリズムの空気をあおった結果だと説明される。

全体像はより深刻だ。ダボスマンが資本主義の利得を略奪し続けたから、市井の人々は経済的安定を奪われ、不満の念が数十年にわたって蓄積されてきた。こうした状況下で、恐怖を操り憎悪をかき立てる政治家たちが表舞台に出てきたが、彼らは社会が抱える諸問題については、支離滅裂な解決策を提示するばかりだ。

ダボスマンがグローバル化の利得をひとり占めしてきた結果、米国は公衆衛生上の危機に直面した。

第一次、第二次世界大戦とベトナム戦争での戦死者総計を上回るアメリカ人が命を落としたのに、明らかに資質を欠く、カジノのデベロッパーだった男を大統領として仰がねばならなかった。英国は壮大な自傷行為といえるブレグジットに今も取り憑かれ、パンデミックに対処できずにいる。フランスは先鋭化した抗議運動で打撃を受けたし、社会民主主義の砦だったはずのスウェーデンまでが反移民のヘイトで沸き返るようになった。すべて、ダボスマンの略奪行為で説明できる。