そもそも日本の法人税は“世界一高い”のか
そもそも、日本の法人税は本当に世界一高いのか。
2018年度の日本の法人実効税率は、前述のように、29.74%で、19%のイギリス、24%のイタリア、25%の中国より高く、33.3%のフランスより低く、29.83%のドイツ、27.98%のアメリカとほぼ同水準だ。
しかし、法人実効税率は、法律で定められた計算上の表面的な税率を示したもので、実際の負担率を意味しない(それゆえ、富岡幸雄『消費税が国を滅ぼす』文春新書、2019年、100頁は、「実効税」という表現そのものが誤用で「法定総合税率」というべきと指摘するが、本稿では、政府文書にも用いられているため、「法人実効税」で統一する)。日本の税制では、租税特別措置法や法人税法による減税措置があり、これらを利用できる大企業の実際の税負担率は、表面上の税率よりはるかに低くなっている。
トヨタ自動車だけで1000億円を超える減税を受けている
富岡幸雄氏の試算によれば、法人所得に対して課される法人実効税の実際の負担率は、大企業では17.46%で、法人実効税率29.97%(2017年度)の6割に満たず、しかも、企業規模が大きくなるほど、負担率は低くなり、資本金100億円を超す巨大企業は16.25%、巨大企業である連結申告法人に至っては、平均負担率は8.58%、法定の負担率の3分の1にも満たない水準という(富岡・前掲『消費税が国を滅ぼす』124–125頁参照)。
なかでも、租税特別措置による減税は大きい。租税特別措置は、特定業種や研究開発の支援といった特定の政策目標を達成するため、税制上の特例として減税する、いわば政策減税であり、隠れた国庫補助金の性格を有する。
租税特別措置法に規定されているもののほか、法人税法自体に含まれるものもあり、現在、80を超える項目がある。代表的なのが、研究開発減税と法人株主の受取配当益金不算入である。前者は、試験研究費の6~14%を、試験研究費の増減に応じて税額控除(当期の法人税額の20%が限度)できる制度で、トヨタ自動車だけで年間1000億円を超える研究開発減税を受けている実態が明らかになっている(2016年3月14日の参議院予算委員会での日本共産党の田村智子議員の質問)。