消費税増税と法人税減税はセットで進められてきた
まず、消費税の増税に並行して、法人税の減税が行われてきた。
法人税の基本税率は、消費税導入時の1989年度では40%だったが、1990~97年度37.5%、1998年度34.5%、1999~2011年度30%、2012~14年度25.5%、2015年度23.9%、2016~17年度23.4%、2018年度には23.2%にまで一貫して引き下げられ、半分近くになった。
この間、東日本大震災復興のための特別法人税も本来よりも1年早く2014年3月末で廃止された(約1.2兆円の減収)。法人税、法人住民税と法人事業税(法人三税)を合わせた法人所得に対する税率(法人実効税率)も、2011年度は40%を超えていたが、2013年度には37%、2018年度には29.74%と、一挙に20%台にまで引き下げられた。
こうみてくると、法人税の減税は消費税の増税とセットであることがわかる。法人実効税率が約35%であったときの地方税を含む法人税収は約18兆円であったから、実効税率1%分は約5000億円に相当する。かりに法人実効税率を10%引き下げると約5兆円の減収となる。これは消費税率8%から10%の引き上げによる増収額にほぼ匹敵する。法人税の減税をしなければ、少なくとも、消費税率を10%に引き上げる必要はなかったのではないか。
法人税の減税はなぜ進んだのか
法人税減税の理由として、日本企業の国際競争力強化や外資系企業の国内立地促進、そして、それによる雇用の拡大などがいわれる。政府もマスコミも、日本の法人税は世界一高く、経済がグローバル化したいま、このままでは、企業が海外へ流出し、産業が空洞化してしまうとの宣伝を繰り返し、多くの人がそう思い込んでいる(思い込まされている)。
とはいえ、法人税は、人件費や原材料費などを差し引いた利益にかかる税金であり、雇用の拡大には直接影響しない。
また、外資系企業が日本に進出するのは、日本での利益を見込んでのことであり、法人税が低くなっても、少子化が進み内需が弱く利益が見込めない日本には進出しないだろう。
さらに、企業が海外に工場を移転するなどしているのは、円高や海外の安い人件費のためで、法人税は直接関係ない。実際に、前述のように、これまで何度も法人税の減税が行われてきたが、自動車産業などの海外移転に歯止めはかかることはなく、国内の雇用は空洞化している。円安が進んでも、輸出企業は海外の生産拠点で生産するため、輸出も伸びていない。
各種のアンケート調査でも、法人税減税は、雇用拡大にはつながらず、むしろ、内部留保と株主配当・役員報酬の増大につながっていることが明らかになっている。大企業(資本金10億円以上の企業。以下同じ)の内部留保(金融・保険業を含む)は、2019年7月~9月期で456兆円となり、過去最高を更新している(財務省「法人企業統計調査」による)。