救急搬送は年間9000件近くにも
そして同院も2月、初めて院内クラスターが発生した。
クラスターが起こると、患者が占有しているベッドだけでなく、新たなゾーニング(隔離処置)が必要になるため、実質それ以上にベッドが使えなくなる。この頃、救命救急センター長の鍜冶有登は「ベッドがない」が口癖だった。
ベッドがない上に救急車の受け入れ要請は一向に減らない。ある晩は51件もの要請があった。そのうち受け入れられたのは、17件。
「この病院にきて11年になりますが、受け入れられないというのは初めてでした。要請の3分の1しかとれないんです。ただね、一晩で17件は“いつもの数”なんです」
同院は年間約9000件近くの救急搬送を受け入れている。これは大阪府の救命救急センターでほぼ例年トップの数字だ。341床の病院(2022年4月1日からは400床)という、大病院とはいえない規模の医療機関が達成している数字であることを踏まえると、二重にすごい。その年間9000件を1日に換算すると「24件」が通常である。「一晩で51件」がいかに“普通ではない”かがわかるだろう。
「がんばってもがんばってもそれ以上の要請がある。ここは岸和田市ですが、大阪市の救急隊から『30件目なんですけどお願いできますか』などと言われて、『近隣がどっかとってやりぃや』と内心思う。でも、できる限りとる。けれども第6波では『もうちょっとがんばりいや』と断る時もありました」(鍜冶有登)
ついに湘南鎌倉総合病院でも
ついに湘南鎌倉総合病院でも2月、院内クラスターが発生した。
同院で入院患者がコロナになれば、それは臨時病棟が請け負わなければならない。
「例えば95歳の患者さんに人工呼吸器はつけられないと説明しても、『おたくでかかったのにやらないんですか』と言われたり、『うちのお父さんがコロナになったってどういうこと!』と家族からここに怒りの電話がかかってくるんです。
でも家族の気持ちもわかります。数カ月入院していて、面会を我慢していて、コロナになってしまって今度はコロナ臨時病棟へ。まして亡くなってしまったら、コロナで死んだ、と思ってしまいますよね。ただ、コロナの重症度としてだけ考えるなら、入院適応でない軽症の人ばかりなんです」(會田悦久)