「どう改善すれば…意見を言う場所もない」

「コロナもやる、コロナ以外もやる」と表明した京都の宇治徳洲会病院も、第6波はパンクした。

コロナの救急搬送が、2021年の1年間で157件だったのに対し、2022年は1月と2月の2カ月間ですでに149件なのだ。コロナだけではない、2022年に入ってから救急搬送も全体的に増えた。

宇治徳洲会病院(京都府)のER
撮影=笹井恵里子
宇治徳洲会病院(京都府)のER

「一般的な病院では救急患者さんの3分の2は9時~17時の間で発生し、夜間は3分の1なんです。ところが当院の場合、他の病院が診ない時間帯に患者さんが増えるということで、夜間の救急患者さんが全体の6割を占めます」(末吉敦)

これまで心肺停止の救急患者が年200件、運び込まれるペースだったが、2022年1月と2月は年600件のペース。発熱、呼吸苦を訴える患者も急増しているという。それだけ他院が診ていないということである。

京都府は休日の診療体制が整備されておらず、災害時の医療体制も確立していない。ドクターヘリも京都府だけが単独運用されず、高度救命センターもない。2019年の京都アニメーション放火殺人事件も、重症の熱傷の患者さんは京都府外に搬送されているという。末吉がため息をつく。

「コロナでますますこの地域の脆弱ぜいじゃくな体制が明らかになり、それぞれの病院がもつ機能も明らかになりました。けれどもそれを踏まえてどう改善していけばいいのか、ぜんぜんわからないです。意見を言う場所もありません」

大阪では「100件問い合わせてようやく1件」

大阪府ではコロナ感染の疑いで高齢者、かつ重症患者のたらいまわしが頻発していた。

ある高齢患者のケースでは、100件目の問い合わせで、ようやく岸和田徳洲会病院の救命救急センターに受け入れてもらえたという。

「100件目とはにわかには信じがたい数字でしょう。ですが患者さんを受け入れた後にコロナ陽性で、かつ重症だった場合、対応できる病院が限られているのでどうしても敬遠されてしまう。あとから転院搬送すればいいのですから、とりあえず救急病院はファーストタッチ(初期治療)をするのが当たり前なのですが、その当たり前の判断の余裕すらもてないほど第6波は圧倒的に感染者が増え、医療供給体制が危機に瀕していました」(東上震一)