「他人事」の病院が見捨てた患者で現場がつぶれていく

現場は限界に近づいていた。その原因の一つは、いつまでも「他人事」の医師や医療機関の存在ではないだろうか。たしかにコロナを診る設備が整っていない医療機関もあるのだが、それぞれに発熱外来やアフターコロナなどできる治療、役割があるはずだ。

笹井恵里子『徳洲会 コロナと闘った800日』(飛鳥新社)
笹井恵里子『徳洲会 コロナと闘った800日』(飛鳥新社)

鎌倉市や横須賀市のように各地域の医師会が地域の核となる病院と協力体制を敷けば、一つの医療機関に過度な負担がかかることを防げただろう。鎌倉市だけが優れていても、他の地域も自分ごととして捉えなければその地域の救急患者が湘南鎌倉総合病院に搬送されてくる。

どこの徳洲会グループ病院も、“地域外”の患者があまりにも多すぎるのだ。各地の医師会、そしてそれを束ねる日本医師会はどれだけ自分たちの患者として、コロナに対峙たいじしただろうか。

それともずっとコロナに関わらなかったから、第6波になって治療に参加したくても、今更コロナを診る技術がないとは言えなかったのかもしれない。

誠実にがんばってきた医療機関がつぶれていく様は、私も見ていて悲しく、何もできないことがもどかしかった。

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