院内クラスターが発生して、コロナ患者を受け入れる上に、ERからのコロナ患者も途切れない。2月のある日、私が取材している最中にも電話が鳴った。

「えっ、3名全員、入院させないといけないの?」

電話をとった會田の顔が一瞬くもった。後ろで「まじっすか」と、つぶやく医師もいる。

コロナ臨時病棟開設当初の2020年5月は数人の入院患者だったが、夏の第2波では40人くらいまで増え、第3波は100人を超えた。関西で医療逼迫ひっぱくが起きた第4波では、ここでの入院患者は少し減って常時40人程度。そして第5波では感染大爆発となり、入院患者が120人まで達した時期もあった。

第5波を乗り越えた看護師も気力が持たず…

第6波では入院患者は50人程度だ。第5波の半分以下である。しかし會田は、今が最も厳しいと感じている。

會田悦久氏
會田悦久氏(撮影=笹井恵里子)

「第5波から第6波の間まで3カ月くらい小康状態が続き、このコロナ臨時病棟も入院患者がほぼゼロというくらい落ち着いていました。あの期間に皆、緊張の糸が切れてしまったんです。

第5波の時は本院の病棟を閉めて、そこを担当していた看護師さんをあてて100人体制でしたが、第5波が終わった後、コロナ臨時病棟で働いていたナースが辞めてしまい、戦力が大きくダウンしました。今はコロナに慣れている看護師さんが少なくなってしまいました。ですからたくさんの入院患者を受け入れることができないのです」

コロナ禍で同院の看護師にもインタビューをしたことがあるが、皆、生き生きと働いているように見えた。特別手当がつき、世の中から求められることがうれしいと口にした看護師もいた。自分が感染する恐怖よりも、仕事へのやりがいが上回っていたのだ。

それが第5波が終息し、通常の仕事に戻った時、心にぽっかりと穴が空いたような心境になったのかもしれない。コロナを経て、自分の仕事の必要性や意義を改めて認識し、普段の給料では安すぎるという声も聞いた。

感染者が増えすぎて入院患者を診察できない

看護師だけでなく医師も足りない。

「人手を募集していますが、これまでのどの波よりも急激に感染者が増えすぎて追いつかないんです。増え方の波でいうと、第5波の5倍といってもいい。今日はもう6時間働いていますが、まだここに入院している50人の患者さんを1人も診察していません。

昨日もドクターが2人で、1人につき30人の患者さんを診るような状況で、そのカルテの整理がぜんぜん終わっていないんです。そのあおりが翌日にきてしまうというのを繰り返しています。退院調整も手間取ると、1人に1時間弱くらいかかる。このまま終わらないんじゃないかと……」(會田悦久)

コロナ用に180床を確保していても、現状の医師や看護師の人数では“60人”の入院が限界だという。