安定供給のため4つの水源を確保

ブランドの主軸商品は社内で“本体”と呼ばれる「サントリー天然水」(ミネラルウォーター)だ。消費者からは「クセがなくて飲みやすい」という声も多い。

近年は商品ラインナップも増え、炭酸水のほか、オレンジ、ぶどう、洋なしなどのフレーバーも展開する。

「多くの清涼飲料水は“小から大”に動きます。お客さまが500mlで好きな商品を買い、自宅で飲むために大容量を買う。でも本体のミネラルウォーターは逆で“大から小”。自宅で飲み慣れた大容量ブランドを500mlで買う傾向にあります」

「サントリー天然水」の採水地は国内4カ所に分かれており、これにはリスクヘッジ(危険回避)としての安定供給もある。商品ラベルの下に「南アルプス」「北アルプス」「奥大山」「阿蘇」と記されるが、これは各工場が立地する水源をさす。

いずれも自然の水を直接採水した後、濾過ろか・加熱を行い、無菌環境でボトルに充填じゅうてんする。2021年5月に第4の水源として「北アルプス信濃の森工場」が稼働している。工場の敷地内には体験型施設も備えた。

北アルプス信濃の森工場外観
写真提供=サントリー食品インターナショナル
北アルプス信濃の森工場外観

気分転換に選ばれるスパークリング

近年のブランド拡大に貢献したのが「サントリー天然水スパークリング」(炭酸水)シリーズだ。強炭酸水を打ち出した「THE STRONG 天然水スパークリング」や「スパークリング レモン」が人気で、派生商品「スパークリング はじける濃いレモン」「スパークリングCRAFT じゅわっと梅ソーダ」などもある。

例えば、梅雨時に在宅デスクワークをしながら好まれる味は何だろう。

「お好みによりますが、スパークリングレモンが人気ですね。心地よい刺激感で気持ちをリフレッシュしたいのでしょう。コロナ禍で『週2回程度となった出勤日は疲れる』という声も聞きます。そうした出勤日に携帯される飲料として、『サントリー天然水 きりっと果実 オレンジ&マンゴー』や『サントリー天然水 特製レモンスカッシュ』が選ばれたりもするようです」

逆に、本体は習慣で選ばれやすいという。図表1で紹介したように、強い飲料水ブランドはロングセラー商品が多い。「好みの定番化、定番回帰の傾向は強まっています。情報量が多くなった結果、逆に消費者が選択することに面倒を感じているのかもしれません」。