「ピチュー」と「ピカチュウ」ではどちらを強いと感じるか

実は、もっと単純な音と意味とのつながりもある。「ピチュー」と「ピカチュウ」を比べるとわかるように、「ポケモンの名前は進化すると長くなる」という傾向にあるのだ。

川原繁人『フリースタイル言語学』(大和書房)
川原繁人『フリースタイル言語学』(大和書房)

つまり、「名前の長さ」が「大きさ」をそのまま象徴しているのである。この関係は、実在するポケモンの名前でも多くの言語で確認されているし、実験でも同じ効果が確認できる。ポケモンは名前を呼んで召喚することが多いので、「名前が長い」=「召喚の詠唱時間が長い」=「強い」的な連想が働いているのかもしれない。

さて、「発音の仕方によって意味を模すことができる」そして「音と意味とのつながりには言語を超えた普遍性がある」という可能性は、我が娘も気にしている「言語起源の謎」の答えのひとつになり得ると、我々の研究チームは思っている。ヒトが進化の過程で言語というツールを取得する前、このような「意味を模した声色」を使って意思疎通を図っていた可能性は低くない。

ポケモンの名前研究は言語起源の謎にかかわってくる

もちろん、現在ヒトが操る言語で表せる意味は、声色だけで表せる意味の範囲を大きく超えている。だから、声色を使ったコミュニケーションから言語が派生したとしても、そこにはもう一段階何かしらの大転換があったはずで、実際にそれが何だったのかは未だに謎のままだ。しかし、ポケモンの名前を研究することで、我々ヒトが言語の違いを超えて持つ共通の感覚が浮き彫りになり、それが言語起源の謎に光を照らすかもしれないということに、私は大きなロマンを感じるのだ。

私のポケモン研究がバズると「濁音=大きい、とかイマサラwwww」とディスられることもあるが、ポケモン研究はそんなに底の浅いものではない。音声学的知見に照らし合わせ、統計分析や実験を駆使して、世界各国の言語を分析し、言語起源の謎の解明も視野に入れる。そんな、世界も認める奥深い研究なのだ。これらを踏まえた上で、それでも文句がある人がいれば、その時はネット上ではなく、学問の場で、真剣に議論しようではないか。

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