約1140億円を使って作られた「小京都」も営業停止に

ネット炎上が8月12日で、翌日の8月13日、CM出演していた複数の大手ブランドとの契約が、その日すべて打ち切られた。撮影中だった主演作品も降板を余儀なくされ、事実上芸能界から追放されてしまい、取り消された広告契約は26社以上に上るようだ。

1991年生まれの彼は、事件当時まだ30歳である。留学した先での思い出の数々をSNSに投稿しただけで、輝ける前途を一瞬にして失うことになった。それはあまりに酷である。

張哲瀚事件のほぼ2週間後、今度は「京都」が消される羽目に陥った。

コロナ蔓延直前まで、日本中がインバウンド特需に沸いていた。特に目立ったのは中国人の訪日観光客である。数の多さとともに、「爆買い」という言葉も生み、中国人の海外旅行先で人気ナンバーワンだったのは日本である。

それがコロナで「ご破算」となった。

対面での交流が失われると、何が起きたか。反感を伴う双方への不信感である。良くも悪くも、接触がなくなると、尖閣問題もコロナ問題も、対話の糸口さえ見出せない。

そんななかで起きたのが「小京都」問題だ。

「小京都」とは、2021年夏、中国東北部・大連に東京ドーム13個分の敷地を使い、60億元(約1140億円)の資金が投入されて造られた模擬都市である。中国人が大好きだった「京都」の再現だったが、わずか1週間で営業停止に追い込まれる。あまりに「日本」が前面に出すぎていたため、ネットで「日本文化の侵入」などと批判が集中したことが理由だといわれる。

ここ数年で日本への印象は驚くほど悪化している

「小京都」には、1200戸の住宅と90軒の店舗が設置予定で、停止時点で完成していた300戸の住宅はすでに完売状態だった。店舗も、日本の家電メーカー、北海道物産店、日本料理店などがあり、8月25日に街開きが行われると、観光客が多く訪れていたという。

それから約半年後。「小京都」は名称を変えて再スタートを切ることになる。当初の「盛唐・小京都」から、「金石万巷」と、日本とは無関係の名前に変わった。街に展開する日本料理店も、日本を前面に出さないような店名にするよう指導を受ける。たとえばカレーパン店「神戸異人館」は、ラーメンの提供もあったので「味噌拉麺」という店名になったという(ハフポスト日本版、2022年1月19日)。

そして、日本色を薄めるために、日本以外の国も出店するようになったという。北朝鮮の「平壌冷麺」やスペイン、イタリア、ロシア、モンゴルなどの料理店が並んだ。

2021年、言論NPOと中国国際出版集団が共同で行った調査によると、中国人回答者の66%が日本に「良くない」印象を持つと答えた。訪日観光客が束になって訪れていたほんの数年前は、半数近くが日本に良い印象を持っていたのに比べて、驚くほど悪化している。日本政府が20年に香港国家安全維持法に「遺憾」を表明したこと、ウイグル問題でアメリカ政府に同調する動きなどが影響したようである。

このように、2021年は日中間で様々な出来事が起きた。だが、その年のスタート時点では、思いもよらない出来事が起きていた。春節映画の興行成績である。