※本稿は、青樹明子『家計簿からみる中国 今ほんとうの姿』(日経プレミアシリーズ)の一部を再編集したものです。
独身男性を苦しめる“天の価格の結納金”
――僕ら山東省地域では、世間でいう「天の価格の結納金」というのはないな。だいたいが6万8000元から8万8000元の間くらいだ。ただし、男性側は女性側に「4金」を用意しなくてはいけない。イヤリング、ネックレス、指輪、ブレスレットだね。これらは絶対ケチってはならない。つまり結局、かなりの物入りになってしまう。
――一般的な家庭の場合、結納金は15万元以上で、車と家を持っていることが結婚の条件となる。もしも車や住宅がない場合、100万元ほど足さなければならず、結納金は簡単に「天の価格」となってしまうだろう。この天文学的数字を、政府は厳しく取り締まってはいるが、こうでもしなければ、男性は嫁をもらうことができず、女性だって結婚が難しくなる。ああ、ほんとに人の世は困難の連続だ……。
――結納金というと必ず出てくるのが「万紫千紅一片緑」だが、これっていったいいくらなんだい?
新中国建国以来、結納金(彩礼)については、旧来の陋習として批判を受け、簡略化の方向に進んでいた。
50年代、結婚に必要なものは「魔法瓶、洗面器、ベッド用品、痰壺」くらいで、当時の金額で14元ほどですんだ。しかし60年代に入ると「結婚の条件は36本の脚」といわれ、ベッドやテーブル、洋服ダンス、椅子など、婚礼家具の脚が合計36本以上ないと結婚できなくなった。費用は当時のお金で、だいたい177元だったという。
70年代は、三種の神器ならぬ四種の神器が必要となる。ミシン、腕時計、自転車、ラジオで費用は500元まで上がった。80年代に突入すると、冷蔵庫、洗濯機、テレビ、VCD(ビデオCD)器などの高級家電となって、費用も一気に2300元にまで上昇した。
現代はどうか。簡単には測れない。結納金はまさに「天の価格」にまで上昇したからである。
象徴的なのが「三斤三両」「万紫千紅一片緑」だ。
「三斤三両」は、一斤500g×3、一両50g×3、合計すると1650gである。肉でも野菜でもない。100元札で1650gが必要だという意味である。金額にすると、13万6000元(約258万円)ほどになるらしい。