新婚初夜に新郎が新婦を刺し殺してしまう事件も…

2021年に発表された中国版国勢調査(第七次全国人口数据統計)によると、2020年、総人口における性別比(女性100人に対する男性の数)は105.07で、男性の人口が女性を3490万人余り上回っている。結婚適齢期にあたる20〜40歳では、男性が女性より1752万人多いことになり、人口性比は108.9になる。

未来予測も暗い。2015年から25年、「結婚できない男」(剰男)は毎年15%ずつ増加し、平均して120万人の男性が初婚での結婚相手を見つけることができない計算になるという。

男女比のアンバランスは、社会に与える影響が大きい。

数年前、痛ましい事件が河南省の農村地区で起きた。新婚初夜に、新郎が新婦を刺し殺したというものである。なんでも結納金をめぐって口論となり、新郎が衝動的に刺してしまったという。新婦は初婚ではなく、結婚回数も比較的多くて、どうやらその都度高額の結納金を要求していたらしい。一種の詐欺のようだが、なんとなくわかっていても、目の前に結婚の可能性が提示されると、それに乗るしかないという悲しい事情がある。

男女比のアンバランスが引き起こす社会問題は、農村地区で特に顕著である。某農村では、結婚適齢期の男性は30人を超えていた。しかし相手になり得る女性は一人もいない。男性より年齢が上でも同じである。

結婚を焦る独身男性たちが住宅価格を押し上げている

既婚であっても、夫婦仲があまり良くないという噂が流れると、その家の門前に「仲介役」の中年女性(有料の結婚相手紹介業か)が潜み、件の既婚女性を待ち受ける。そしてひそかに交渉を始めるのである。

「離婚しないかい? 再婚相手を紹介するよ。結納金として数万元は用意できる」

このように、農村に独身女性はほとんどいないが、大都市になるとその数は多くなる。しかし大都市の独身女性は、収入も潤沢だし、自分で住宅も購入済みで、彼女たちと農村の独身男性を結びつけるとなると、非現実的である。

お金を積まないと花嫁がもらえない。それが結納金の高騰につながった。高額な結納金を用意すると、その後生活が困窮をきたす。それでも、永久に独身でいるよりはましなのではないか……。

家を持たないと問題外である。しかし、住宅価格はとてつもなく高い。

日本で住宅を購入しようとすると、平均年収約433万円の約8倍だが、北京だと、平均年収約263万円の約31倍、深圳では平均年収約132万円の約48倍とも言われる。

近代的な中国の住宅
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中国の住宅価格を押し上げているのも、結婚を焦る独身男性たちだという。どんなに無理をしてでも、とにかく競争の土俵に上がるためには、最低限の条件を整えなければならない。

その選択が正しいかどうかは別として、農村における高額結納金、また住宅取得問題は、現代社会の矛盾を映し出していることは間違いない。