密室殺人事件を軸に、温泉、相撲、歌舞伎町などが次々と登場し、中国人がイメージする「日本」が満載だ。そこに「やくざ」がからみ、「日本度」は沸点に達していた。
出演者も豪華である。中国側の主演二人は言うまでもなく中国国内の人気スターだし、共演の日本人俳優は、中華圏での知名度が高い大物がこぞって登場する。
前作から出演している妻夫木聡さん、台湾映画に中国語で主演した長澤まさみさんをはじめ、中華圏ではいまだに「神スター」の三浦友和さん(山口百恵さんと共演した「赤いシリーズ」は、10億人が見たといわれる)、日本語学習者のバイブル『東京ラブストーリー』のヒロイン鈴木保奈美さん、そして日中合作映画『空海』で主演した染谷将太さん、中国映画に出演経験があり、中国で知名度のある浅野忠信さんなどである。
大ヒット映画の影響で北海道に観光客が殺到
思い起こすのが2008年の映画『狙った恋の落とし方。(非誠勿擾)』である。
こちらも中国映画史上記録に残る大ヒット作だが、映画後半の舞台は、日本の北海道だった。釧路、阿寒湖、網走、厚岸、斜里、美幌などの美しい風景が描かれ、この作品を契機に、中国で北海道観光ブームが巻き起こった。
これが日本経済に与えた影響は改めて言うまでもない。北海道への中国人観光客が激増し、釧路空港への国際便乗り入れも増加した。また、いいことか悪いことかは別にしても、中国人投資家による北海道の土地購入も増えた。
中国人になぜ北海道が好きかと尋ねると「高倉健さんの映画」「狙った恋の落とし方。」と、このふたつの影響を挙げる人は多い。
コロナでインバウンド観光が消滅して2年になる。しかし疫病はいつかは収まるものだ。北海道ブームの次は東京・チャイナタウンかもしれず、別の都市かもしれない。しかし、いつどこで、どう風向きが変わるかわからないので、準備だけはしっかりしておく必要がある。
40年たっても変わらない「神スター」
いずれにしても、《唐人街探案3》は、2021年春節の話題の中心にあったことは間違いない。そんななか、満足度が高いとした人は、どういう点に賛同したのだろうか。それは「東京」と「日本人スター」である。
「《名偵探柯南(名探偵コナン)》を思い起こす。東京の今が見られたのは嬉しい」
「日本人俳優の存在感が素晴らしかった。三浦友和と長澤まさみが特にいい。二人の演技は精彩を放ち、作品の世界を昇華させている。日本語に好感を持った」