これからの時代の企業経営、さらには日本の産業競争力の強化に求められるのは、“事業の脱自前”です。“本業を再定義”し、今ある事業の“強み”を更に伸ばすには、担い手として誰がふさわしいのか、いわば「ベストオーナー」を見極める必要があります。それが自社でないのなら、組み換えを積極的に行うのです。

事業と伸ばせる担い手との組み合わせをオープンに選び合うことで、限られた資源を最適な形で再配分し、収益性を高めてゆけるのです。

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プラスを伸ばすのか、マイナスを底上げするのか

“事業の自前主義”を脱却して、将来に向けた事業の「選択と集中」を考えるうえで重要な論点があります。それは、「プラスをもっと伸ばすのか」、それとも「マイナスを底上げするのか」という選択です。

この論点は、日本の企業や産業レベルのみならず経済政策全般にも共通した、これからの日本の成長を促すうえで根幹となるテーマです。今までの自前主義に基づく経営においては、全体の規模を維持しながら収益向上を目指すことを念頭に、後者の「マイナスを底上げする」ことに重きを置くのが一般的でした。

企業でいえば、売上規模や雇用人数は一定程度保つことを前提に、利益がプラスの事業はそのまま維持し、利益がマイナスの不採算事業は立て直して底上げすることで、全体の収益向上を目指すという考え方です。

全体を一体のものとして自前で維持する考えが根底にあるので、事業の入れ替えは進まず、企業全体の収益性は低いままの状況が温存されがちでした。

伸びない分野は、積極的に外に任すべき

私は、これからの日本を考えると、前者の「プラスを伸ばせるものはもっと伸ばす」という考え方に、判断の重心を移してゆく必要があると考えています。

その理由は、日本の置かれている状況にあります。日本全体の生産人口が減少し経済規模が縮小してゆくなかで“成長”を遂げてゆくには、限られた資源を分散させずいかに効率的に集中投下できるかが、カギを握ります。

限られた資源の配分先として、「伸ばせるものを伸ばすこと」に優先的に充てるほうが、「伸びないものを引き上げること」に資源を割くよりもより効率的で、全体を成長させることに貢献するのです。

“事業の脱自前”において「選択と集中」の意味するところは、「伸ばせるものをもっと伸ばす」ために、「伸びないもの」については、自前でやるのではなく、外のベストオーナーに積極的に任せることにあります。