ロシアへの制裁で原油の供給が追い付かず、レギュラーガソリンの価格は高止まりを続けている。元東大特任教授の村沢義久さんは「ガソリン車に頼る日本車メーカーは、これで本格的に電気自動車(EV)へシフトせざるを得なくなった」という。ライターの落合龍平氏がリポートする――。
ガソリンスタンドでセルフで給油する女性の手元
写真=iStock.com/bee32
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ガソリンの高騰は「電気自動車シフト」を生む?

「ガソリン高すぎて、もうキレそう」
「ガソリン代で今月ピンチ……」
「いつまで値上がりするのか……」

こんな声がTwitterユーザーの間にあふれている。

ガソリン価格が記録的な高騰を続けている。資源エネルギー庁が発表した、4月4日時点のレギュラーガソリンの価格は、1リットルあたり174円10銭という高水準だ。庶民にとって、ガソリン価格の高騰はもちろん痛手に違いない。

岸田政権も、ガソリン元売りへの補助金など、対策を打ち出してはいる。だが、世論が期待する「トリガー条項の凍結解除」には、依然として慎重な姿勢をとっている。

さて、ガソリン高騰を受けて、「ある分野」に、今後ますます注目が集まりそうだという。 その分野とは、実は「電気自動車(EV)」だ。

ランニングコストはガソリン車の約半分

長年にわたりEVを研究し、『日本車敗北 「EV戦争」の衝撃』(プレジデント社)などの著書がある、元東京大学特任教授の村沢義久氏は次のように言う。

「ガソリン価格の高騰が続けば、EVに乗り換える動きが出てくるでしょう。車種や使い方によっても変わりますが、通常の使い方なら、EVのほうがランニングコストははるかに安いからです」

ハイブリッド車の平均的な燃費がおおむね20km/L。一方、EVの「電費」はおおむね6km/kWhと言われている。

ガソリン価格が1Lあたり170円で、年間走行距離が5000kmの場合、ハイブリッド車の燃料代は4万2500円。

一方、1kWhの電気代を27円とすると、EVの年間での「電気代」は2万2500円。明らかにEVのほうがお得だ。

車両価格が上がってもEVシフトが止まらない理由

一方、EVにとって良いニュースばかりではないようだ。ガソリン価格だけでなく、EVの車両価格も「インフレ」にさらされているという。

ウクライナ情勢を受けて、アルミやニッケルの価格が上昇し、それが車両価格を押し上げているというのだ。

テスラのイーロン・マスク氏は「インフレ圧力を受けている」とツイッターに投稿している。事実、テスラ車はここ1年ほどで約1万ドルほど値上がりしているという。22年1月~3月の同社の世界販売台数は、前年同期比68%増の31万48台と、増えてはいるが市場の予想を下回っている。