水素ステーションが近くにぜんぜんない
それでもFCVに期待する声は多い。特に、EVに比べて、FCVはガソリン車並みの航続距離が得られる点が、最大のメリットだと言われている。
しかし、この考え方すら「時代遅れ」(村沢氏)だという。
「航続距離では、テスラ『モデルS』など、EPA基準(実測に近い)で600kmを超えるEVも当たり前になってきています。
ルーシッド「エア」やNIO「ET7」のような高級車の航続距離は800kmを超えてきています。数年のうちには、200万円台の大衆向けEVでも、航続距離400km超が『常識』となるでしょう。そうなれば、水素燃料電池車の航続距離は、大きなメリットではなくなるでしょう」(村沢氏)
しかも、水素技術にはさらなる「致命的な欠陥」があるという。
「肝心の水素ステーションが少ないのです。日本全体でも、いまだに約150カ所しか存在しません。水素燃料電池車を所有しても、水素の補充には非常に手間がかかるでしょう」
しかも、水素ステーションの増設は今後も難しいと村沢氏は言う。
ガソリン値上げが業界の構図を変えつつある
「現時点の計画では、2025年までにたった320カ所。日本全体をカバーするには到底足りません。
水素ステーションの建設には、1カ所あたり5億円もの費用がかかります。日本全国をカバーするように、水素ステーションを建設するとしたら、兆円単位の投資が必要になるでしょう。実現可能とは到底思えません」
実際、日本車メーカーも水素燃料電池車の普及は諦めているという声も聞こえてくる。
EVの進化が加速する中、FCVの存在意義が薄れつつあることは間違いない。ガソリン価格の高騰は、EVシフトを一挙に進める好機となるのか。それとも、「亡国の技術」にこだわり、戦略ミスによる自滅のはじまりなのか。
今後の展開が注目される。