コロナ禍が変革を加速させた

オムロンの取り組みは、あくまで一企業の例ですが、そこには日本の成長を考えるヒントがあります。強みを有するコア領域をより強くする事業ポートフォリオ変革を行うことで、従業員数が減少しても一人当たりの付加価値と企業価値を高める戦略は、人口減少下において「産業と人財のベストな組み合わせ」によって付加価値を高める日本の成長シナリオの縮図といえるでしょう。

松江英夫『「脱・自前」の日本成長戦略』 (新潮新書)
松江英夫『「脱・自前」の日本成長戦略』(新潮新書)

事業ポートフォリオ変革による“事業の脱自前”は、コロナ禍を経てより拍車がかかっています。コロナ禍で、人の動きや価値観が大きく変わりました。

影響が大きな産業では既存事業の需要が戻ってこないことを前提に、事業構造の改革を行うと同時に、新たな成長を牽引する事業を取り込んで、全体の事業構成のあり方を変えてゆこうとしています。

さらに、産業社会に大きな影響を与えるのが地球環境への対応です。地球温暖化対策として、カーボンニュートラルという概念は産業全体に抜本的な変革を迫りました。

ポスト・コロナにおいては、将来的な環境変化を見越した事業ポートフォリオ変革がますます経営の中心課題になってゆきます。

全ての事業を自前で抱え込むのではなく、存在意義と将来像に基づいて、将来に向けて自らが持つべき事業(“将来の自前”)と、必ずしも自社で持たなくてもよい事業(外と連携する領域)を見極めて、適切な組み合わせを選択してゆくことが重要になります。

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