食事法の「デメリット」は個人差が大きい
ちまたには、健康によいとされる食事の情報があふれています。でも、その情報の質はさまざまで玉石混交です。だいたい食事が健康に与える影響は小さく、治療薬の研究に比べて、短期間の研究では明確な結論が出にくいという特徴があります。だから「健康にいい食事法」に関しては、言ったもの勝ちという面があります。常識から外れた食事法のほうが注目を集めやすいことも忘れてはいけません。よく目や耳にする食事法は、十分なエビデンスに支えられているからではなく、目新しいから話題になっているにすぎないかもしれません。
そして、食事が健康に与える効果は小さいからこそ、どんなに健康によい食事法でも持続できなければ、効果が期待できません。ところが食事は好みの個人差が大きく、ある人には無理なくできる食事法でも、別の人には継続困難な食事法だったりします。好きなものが食べられないこと、継続困難な食事法を続けることは、生活の質を落とします。食事法のデメリットはしばしば軽視されていますが、医療全般において医療介入を行うかどうかをメリットとデメリットのバランスで決めるように、我慢に見合うだけの健康が得られるかどうかも考えなければなりません。
言い換えれば、食事法のデメリットは個人差がきわめて大きいのです。その食事法がどのくらい生活の質を落とすのか、その食事法にどれぐらいデメリットがあるかどうかは、あなた自身がよく知っています。よしんばメリットがあるとしてもデメリットが大きい食事法をわざわざ選ばないほうがいいでしょう。
「糖質制限食」は簡単そうだから流行する
さて、数ある食事法の中でも、糖質制限食はずっと人気のある食事法です。十数年以上前からあるので、もはや流行の食事法ではなく、定番の食事法になったといっても過言ではないでしょう。こうして糖質制限食が流行し続ける一因はわかりやすさにあると思われます。「糖質を避けさえすれば健康になれる、やせられる」という主張は簡単明瞭で理解しやすいのです。また実行するのも簡単そうだからでもあります。
そもそも、糖質というのは、食物繊維以外の炭水化物のこと。砂糖のほか、米や小麦といった穀物、芋などに多く含まれています。糖質制限食では、この糖質――つまりごはんやパンなどの主食や甘いものの摂取量を制限して、魚や肉、野菜などを多く摂取します。糖質制限食では、タンパク質や脂質は制限なくいくらでも食べてもよいとされていることが多いようです。