プレーンヨーグルトや牛乳までカットするのはやりすぎ

中には、糖質制限をしているのに体重が減らないことを、主食以外の糖質の多い食材から「隠れ糖質」を摂取しているからだとみなす医師もいるようです。ジャガイモやカボチャの主成分が糖質であり、食べすぎるとやせられないというのはわかります。

しかしプレーンヨーグルトや牛乳まで「隠れ糖質」としてカットすべきだというのは、厳しい制限だと私は思います。いろいろ制限すればやせるでしょうが、苦労に見合った効果が得られるでしょうか。ヨーグルトや牛乳は、糖質だけではなくタンパク質や脂質をバランスよく含み、日本人に不足しがちなカルシウムも補充できます。アレルギーや乳糖不耐がなく、味が嫌いでなければ、牛乳や乳製品の摂取はおすすめできます。

グラスに牛乳を注ぐ様子
写真=iStock.com/naturalbox
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糖質は多すぎても少なすぎても身体に悪い

こうした極端な糖質制限が提唱された背景には、「糖質が高血糖や老化の原因だ」「糖質があらゆる病気の原因だ」とする誤った理論があるようです。糖質の過剰摂取が2型糖尿病をはじめとした一部の病気の原因であることには異論はありません。しかし糖質があらゆる病気の原因だとはいえませんし、摂取量が少なければ少ないほど健康にいいわけでもありません。あまりにも糖質を制限すると、かえって体に悪影響を及ぼすかもしれません。

実際、アメリカ合衆国の約1万5000人を対象に、総摂取カロリーにおける糖質(炭水化物)の割合と総死亡率との関連を長期間にわたって調査したところ、糖質が多くても少なくても高い総死亡率と関連するという結果でした(※1)。図にするとU字型になります。

(※1)Dietary carbohydrate intake and mortality: a prospective cohort study and meta-analysis

素直に解釈すれば、糖質の摂取量は多すぎても少なすぎても体によくないといえます。総カロリーに占める糖質のカロリーが70%を超えたり40%未満だったりすると総死亡率が上がるので、40%未満は極端な糖質制限だといえるでしょう。ちなみに、厚生労働省による「日本人の食事摂取基準」では、糖質は総カロリーの50~65%の範囲が目標値になっています。

この報告では、動物由来のタンパク質や脂質の消費が総死亡率の大幅な増加と関連することも示されました。健康になろうとして極端に糖質を減らし、代わりに肉を食べるのはやめておいたほうがいいでしょう。とくに赤肉(牛肉や豚肉といった哺乳類の肉)や加工肉の摂取は大腸がんのリスクとの関連が指摘されています。ただし、平均的な日本人の消費量では、赤肉の害は観察困難です。あくまでも食べすぎるのはよくないという話です。