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これは富裕層は富裕層で自分たちの資産を守るために日夜腐心していることの表れなのだろうが、片や貧困層と呼ばれる人たちの世界はどうなっているのか。

いま手元に「若年世代で拡大する世代内格差」というタイトルのレポートがある。著者の第一生命経済研究所経済調査部の鈴木将之・副主任エコノミストは、総務省の「全国消費実態調査」に示された所得分配の不平等さを測るジニ係数の推移に着目する。

94年から5年刻みで各年代のジニ係数の変化を追っていくと、70歳以上では社会保障の整備などにより、格差が解消される傾向にある。逆に30歳未満、30~39歳では格差が一気に拡大している。年間収入別の世帯構成の分布を見ても、30歳未満では99年に400万~500万円の間にあったピークが09年には300万~400万円へ下方シフトしている。その一方で09年には600万~800万円の間にもう一つのピークが表れ、二階層化していることが読み取れるのだ。

その原因について鈴木副主任エコノミストは「正規労働者と非正規労働者の二つの異なる水準の年間収入の分布が示された結果でしょう」という。つまり、安定した収入のある正社員と、低賃金にあえぐ派遣や契約社員との格差が如実に表れてきているわけだ。

「従来であれば、高校新卒者の雇用の受け皿だった工場や一般事務といった仕事が、製造部門の海外移転やIT化による間接部門の省力化などで失われています。大学新卒者についても一部が就職できないまま難民化する状態が続いています。これらの人たちは非正規社員として働き始めるわけですが、その状態がずっと固定化していくことになる可能性が高いのです」

そう聞くと、なんだか八方塞がりの気分に襲われる。また、独自の賃金調査を行っている北見式賃金研究所の北見昌朗所長は「10年度の首都圏の30歳男性の年収は403万4276円。グローバル化の波は賃金にも及び、中国人と同水準になるまでこのままの状態が続きそうです」と語る。なんとも切ない話ではないか。

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