では、いまどきの富裕層とは、どのような人たちなのか。その疑問を解くべく、1999年11月に日本の金融機関として初めて三菱UFJ信託銀行が立ち上げた富裕層向けの会員クラブ「エクセレント倶楽部」を訪ねてみた。

現在、同クラブの会員数は約33万世帯。入会条件は取引残高1000万円以上の一定条件を満たす顧客で、同5000万円以上の約3万世帯を「ロイヤルステージ」と位置づけている。同クラブを運営しているリテール企画推進部戦略企画室の石本千明室長によると彼らの平均像は、例えば金融資産を5000万円ずつ三つの銀行に預け、そのほか1億~1億5000万円ほどの不動産を所有しているという。つまり、2億5000万~3億円の総資産を持っているわけだ。

しかし、冒頭のスーパーリッチたちのようにハデにお金を使っているわけではない。石本室長は「先祖の資産や事業を代々継いでいる地元の名士の家系の方々や、専門職、大企業の役員を引退した方々が多く、皆さんとても紳士的で物静か。資産をいかに維持管理、承継していくかに高い関心を寄せられ、遺言信託や不動産仲介などを積極的にご利用いただいております」と話す。

そんな富裕層たちの資産管理に警鐘を鳴らしているのが、ファミリーオフィス的サービスを提供しているワンハンドレッドパートナーズの百武資薫社長だ。

ファミリーオフィスのサービスは、資産運用・管理だけでなく、税金などに対する正しい情報提供を行ったり、子供や孫たちの就学・就職・結婚に関することまで、あらゆる相談にのって、解決への道を切り拓くこと。

大手証券会社で法人営業を担当していた百武社長は、顧客である大企業の経営者の多くが、自分たちの専門領域では辣腕を発揮できても、資産管理については正しい情報を持っていることが少ないことに気づく。そして外資系金融機関に移籍してプライベートバンクの事業に携わった後、ファミリーオフィスを立ち上げた。証券会社時代から付き合いのあった上場企業の経営者や役員OBらが顧客の中心だ。