ロシアとつながっている意外な国々

ロシアがもくろんでいるのは、領域の拡大よりもネットワークの帝国作りです。これを歴史的に見ると、ビザンツ帝国(東ローマ帝国。395~1453年)の戦略と非常に似ています。プーチン大統領は、あえてまねているのだと思います。

すなわち、地理的には離れていても味方を複数作り、時勢に応じて適宜そのバランスを変えていく。中国、インド、ブラジル、サウジアラビア、トルコ、イスラエル、イランなど、それぞれ力を持っている国が相手です。

同じロシア語圏のベラルーシ、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、アルメニア、アゼルバイジャン、ウクライナの東部や南部に対する情報戦略にも、プーチン大統領は積極的です。

中東にある、ロシアと手を握っている国をご存じか

ロシアとネットワークを築く国として、しばしば中国が挙げられますが、インドもまたロシアと経済的な結びつきを深めています。

「自由で開かれたインド太平洋」を守るために、日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4カ国で安全保障や経済について協議する「Quad(日米豪印戦略対話)」が作られました。軍事同盟ではないものの、合同軍事演習も実施しています。

ところがインドは、対ロ非難に加わりませんでした。インドは兵器の4割をロシアから買っていて、既存の装備品の8割はロシア製です。そのメンテナンスの問題も必要です。ただし、武器依存が高いから対ロ制裁に踏み切れないという解説は、違うと思います。ロシアとの関係では極力中立的な地位を維持したいという、むしろインドの主体的な意思の表れです。

インドにとって重要なのは、中国の脅威に対して、オーストラリアとアメリカと日本を巻き込むことだけです。クアッドは価値観同盟ではなく、中国を封じ込める利益があるから付き合っている。それ以上でも以下でもないことが、露見してしまいました。インドはウクライナ侵攻によって割安になったロシア産原油を大量に購入しています。

対ロ関係では、意外と気づかれていないのがサウジアラビアです。アメリカとイギリスはサウジに対し、原油を増産してロシアを孤立させる取り組みに加わるよう働きかけました。しかしサウジは応じていません。ロシアと手を握っているからです。中国に販売する原油の一部を、人民元建てにする方向で協議中だという報道もあります。

サウジアラビアにとって、西側の消費文明を受け入れながらも、政治に関しては権威的な体制を取るロシアや中国は、付き合うのに都合がいい。人権外交を掲げるアメリカよりも、独自のルールを支持してくれるからです。アフリカや中南米の諸国も、同じ感覚です。結局どの国も、イデオロギーや価値観より、利害で動くのです。

サウジアラビア・リヤドのビジネス街
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