糖尿病の場合の「脂質」摂取の考え方

「脂質」については、さほど摂取を意識しなくても問題ありません。肉や卵でタンパク質をとっていれば、必然的に脂質は摂取できるからです。

最近は「高脂質食」についての情報もたくさん出てきていますが、本格的に取り組もうとすると、摂取するグラム数や、脂質代謝に必要なビタミンやミネラルをサプリメントで補うことも考え合わせる必要が出てきて、非常に複雑になります。

まずは、本稿の目的である「糖尿病の予防と改善」のためであれば、それらを考える必要はありません。「お腹が空かない程度の脂質をとる」くらいのイメージで十分です。

また、脂質の摂取をわざわざ避ける必要もありません。カロリー指導を受けた人は「カロリーの高い脂質の摂取は避けるべき」と思い込んでいる方が多いと思いますが、脂質のみの摂取で血糖値は上がりません。血糖値を直接的に上げるのは糖質だけです。

しかし、糖質と脂質を合わせてとると、糖質の影響で血糖値が上がり、インスリンが分泌されて、糖質と一緒に脂質も脂肪細胞に取り込まれることになります。つまり、太りやすくなります。

しかし、脂質だけならこのスイッチは入りませんし、タンパク質と合わせて摂取しても、少量のインスリンしか分泌されないため、過剰に肥満になる心配はありません。

逆に、糖質オフをしながら脂質まで制限すると、エネルギー不足に陥るので、注意が必要です。

空腹をやわらげるためには、エネルギーに素早く変わるMCTオイルを摂取することが助けになることもあります。加熱せずにそのまま摂取するのがコツです。朝や食間の紅茶やコーヒーに加えて飲んでいる人も多いようです。

素早くといっても、摂取してからエネルギーに変換されるまで3時間ほどかかるため、そのタイミングを見計らって摂取する必要があります。

糖質依存からの脱出法

3食の主食をたっぷり食べて、おやつもしっかりとっていた……という人の場合、いきなり糖質をゼロにすると、ほぼ失敗してしまいます。「糖質はやめなければいけない」。その「やめなければいけない」という「我慢」と「義務感」は、必ず反動を生んでしまい、続けることが難しくなるからです。

これを避けるためには、まずは「タンパク質をたくさん食べる」意識を先に持ってくることです。

具体的にいうと、肉や卵、魚でお腹をいっぱいにする、ということです。前菜にタンパク質、主食もタンパク質にしましょう。ごはんやパンはデザート感覚で最後に少量とる、というスタイルにすると、自然と糖質をとる量が減っていきます。

水野雅登『糖尿病の真実』(光文社新書)
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同時に、鉄の摂取も進める必要があります。鉄はエネルギー産生をサポートする重要な栄養素です。鉄が不足すると身体がエネルギー不足になるため、手っ取り早くエネルギーになる糖質を強烈に欲するようになります。

特に、月経で鉄を毎月大量に失う女性は、鉄不足による甘み依存に陥りやすいといえます。鉄は必要量を食事で満たすことはほぼ不可能なので、サプリメントを使って、速やかに満たしてください。

糖質依存から離脱するためには、まずは、タンパク質と鉄の不足を迅速に改善することが必須となります。

また、今まで実際にこの食事法(タンパク脂質食)を開始した全員が、いきなり糖質ゼロにしたわけではありません。たとえば、糖質量を、まず今までの8割、次に6割などと徐々に減らした方もいました。このように、タンパク質と鉄をとりながら、糖質を減らすことが大切です。そうすれば、エネルギー不足になることなく、高タンパク・糖質オフに移行できます。

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