幅広い商品群のうち生活雑貨の企画からデザイン、発注までを手がけるのが生活雑貨部の企画デザイン室だ。15人の社内デザイナーと同数の外部スタッフが商品づくりを担っている。高名なデザイナーをプロジェクト単位で起用することも少なくない。
「シンプルなデザインほど難しいからです」と矢島岐室長はいう。
ただ、デザイン重視はいいが、やりすぎて生活感覚から遊離してしまえば大多数の客はそっぽを向く。どうやってバランスをとるのだろうか。
「ごくまじめに、使う側の立場で商品づくりを行います。だからこそお客様は納得し、共鳴してくれるのだと思います」(矢島氏)
「まじめ」というのは、たとえば次のようなことだ。
良品計画は2003年以来、消費者の家の中の様子を写真に収める「オブザベーション」という取り組みを進めている。
まず、インターネットで公募した一般家庭を若手デザイナーが2~3人のチームで訪れる。そして「ありのままを見せてください」と、乱雑なままのリビングや台所や風呂場などを2~3時間かけて撮影するのである。すでに100家庭分のファイルが積み上がった。
写真を精査することで、思わぬニーズが浮かび上がることがあるという。たとえばシャンプー類のボトルである。メーカーや銘柄ごとにばらばらでは見苦しいし、片付けにくく邪魔である。そこで企画されたのが統一デザインの「PET詰替ボトル」シリーズだ。
04年発売のPET詰替ボトルは、無印良品を代表するロングセラーに育っている。華やかな「MUJI」も、水面下では地道な水かきを続けているのだ。