特に人間の脳で進化した「大脳新皮質」が感情を制御する

大脳新皮質とは、知覚や計算、推測、運動の制御といった、知性全般を管理する脳の重要部位だ。その一部である前頭前野は、記憶や感情の制御など、とりわけ高度な精神活動を司っている。

この前頭前野は、偏桃体をコントロールするという大切な働きを担っている。例えば、偏桃体が察知した「怒り」に対して、「今は怒るような状況じゃないから抑えよう」と判断し、感情をスルーする。あるいは、その「怒り」を客観的に捉え、「私は今怒っているけど、何に対して怒っているんだろう」と根本的な原因や打開策を分析することで、怒りを前向きに消化する。

人によっては、怒りをうまく制御できず、そのまま爆発させてしまうケースもあるだろう。発生した感情をどう捉え、対処するかは、その人の前頭前野の発達具合によって異なる。

偏桃体は、その機能からもわかるように、太古から化石のように脳に鎮座する原始的な部位だ。生命活動に深く関わるものなので、人間以外にもあらゆる生物に、爬虫はちゅう類にすら備わっている。対して大脳新皮質は、進化的に新しい部位で、特に人間の脳において著しい発達が見られる。現代社会の構図に対応するために、偏桃体のコントロール装置として進化してきたとも考えられる。

感情は「喜怒哀楽」で表されるよりももっと複雑で繊細である

大脳新皮質はまた、ネガティブな感情以外の、「嬉しい」「楽しい」といったポジティブな感情にも深く関わってくる。

ネガティブな感情が偏桃体で発生するとしたら、ポジティブな感情もまた、偏桃体で発生するものなのだろうか? その質問に対しては、イエスともノーとも言い難い。なぜなら、厳密に言えば、感情を「喜怒哀楽」で分類することはできないからだ。