やりたいことをすると脳が活性化する

年を取ると、筋力や臓器だけでなく、脳も老化します。認知症はそうした老化現象の一つです。なかでも一番多いのはアルツハイマー型で、「脳が縮む」と言われているタイプです。

実際に脳を解剖すると、海馬や前頭葉に萎縮が見られます。海馬は記憶をつかさどる部分、前頭葉は思考や感情、行動や判断を司る部分です。人間が人間らしく生きるために、最も必要な部分が前頭葉なのです。

和田秀樹『80歳の壁』(幻冬舎新書)
和田秀樹『80歳の壁』(幻冬舎新書)

前頭葉の働きが衰えると、日常生活では次のような変化が生じてきます。

たとえば、考えることが面倒になる、感情をうまくコントロールできなくなる、喜怒哀楽が激しくなる、意欲が衰える、集中できなくなる、などです。

人間の体はよくできており、使わない機能は退化していきますが(廃用性萎縮と言います)、使えば活性化していきます。とくに脳はその傾向が顕著です。

つまり、衰えるに任せておけばどんどん衰退しますが、奮起して使えば活性化させることができるわけです。

そして、最も効果があるのが「したいことをする」ということです。前頭葉にとって、それはとても刺激的なことで、脳が活性化するのです。

楽しいこと、面白そうだと思うことほど、脳にとっては刺激的です。反対に、つまらないことや、我慢を強いると、脳の働きは鈍ります。

我慢をして毎日をつまらなく生き、脳をしぼませていくか、したいことをして毎日を元気ハツラツと生き、脳を活性化させていくか――。

したいことをすることは、脳の老化を防ぐためにも必要なのです。

性欲があることは恥ずかしいことではない

性欲についても再度話しておきましょう。日本人はタブー視しがちですが、本来、性欲は自然な欲求であり、とても大切なことです。

公園で微笑んで幸せな老夫婦
写真=iStock.com/SPmemory
※写真はイメージです

残念ながら、性欲は年齢と共に落ちていきます。とくに男性は、男性ホルモンが減るため如実に低下します。女性は、年を取ると男性ホルモンが増えるため、性欲が多少上がる人もいます。

性欲があることは、恥ずかしいことではありません。男性も女性も可能なら、積極的に性の営みをしたらいいと思っています。

少し前に新聞の「悩み相談」に、79歳の男性の投稿がありました。「毎日のように自慰をする自分は異常なのか?」という悩みでした。

回答者のコメントは忘れてしまいましたが、私が答えるならこうです。

「異常ではありません。素晴らしいことだと思います。男性ホルモンが十分分泌されている証拠です。恥ずかしがるより、楽しみましょう。いつまで続けられるかはわかりません。でも、いつ終わるかわからないことを楽しむのも、この年代ならではの楽しみ方ではないでしょうか。楽しめるうちに楽しんでおかなければ、損だと思います。しかも男性ホルモンが多いことは、判断力や筋力も高めるので若さを保つことにつながりますよ」

女性も同じです。「不謹慎だ」などと考える必要はありません。ある人も、まったくない人もいますが、それは個人差です。新たなパートナーを求めたり、年下を相手にしたりすることにも躊躇する必要はないと思います。

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