あなたは道端に10円玉が落ちていたら拾うだろうか。10兆円の資産を築いた投資家ウォーレン・バフェット氏は「私は10セントが落ちていても拾う」と述べている。そんなバフェット氏の卓越した投資哲学とは――。

※本稿は、桑原晃弥『ウォーレン・バフェットの「仕事と人生を豊かにする8つの哲学」』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

2005年7月、大物投資家や経営者が集まる投資会社主催の会議に姿を現したバフェット
写真=EPA/時事通信フォト
2005年7月、大物投資家や経営者が集まる投資会社主催の会議に姿を現したバフェット(米アイダホ州サンバレー)

豪華なオフィスなど必要ない

バフェットは、車のナンバープレートに「倹約(Thrifty)」と書いていたことがあるほど、「倹約」という言葉が大好きです。もちろん自分の私生活においても「複利式の考え方」を適用することで消費をできるだけ先延ばししようとしていますし、その他の面でもぜいたくをひどく嫌っています。

そしてそれは、投資についても同様です。

バークシャー・ハザウェイがサンフランシスコの銀行ウェルズ・ファーゴの株式を7%保有していた当時、幹部の1人がオフィスにクリスマス・ツリーを飾りたいと言い出しました。その話を聞いたCEOのカール・ライカートは飾ることは拒否しなかったものの、「それほど欲しいのならポケットマネーで買うように」(『ウォーレン・バフェット 自分を信じるものが勝つ!』)と命じたといいます。
この話を聞いたバフェットと、バークシャー・ハザウェイの副会長を務めるチャーリー・マンガーは即座に同行の株を買い増しするという決断をしたといいますから、いかにバフェットが倹約の精神を重んじているかがよくわかります。

バッファロー・イブニング・ニュースを買収した際、同社のこぎれいなオフィスや印刷工場を目にしたチャーリー・マンガーはこんな感想を口にしました。「新聞社が新聞を発行するために、なんで宮殿が必要なんだい」

バフェットも同様の感想を持ったらしく、その建物を「タージマハル」(『投資参謀マンガー 世界一の投資家バフェットを陰で支えた男』)と呼んでいます。それは著名な建築家の手によるものでしたが、風の強いバッファローの街の建物としては相応しいものではありませんでした。