コスト削減は日々意識して当たり前

決して実用的とはいえない建物を莫大ばくだいな費用をかけて建てることほど、この2人が忌み嫌うことはありませんでした。バフェットにとって質素倹約を重んじること、日々コスト意識を持つことは当然のことでした。

「私は、どこかの会社が経費削減に乗り出したというニュースを耳にするたびに、この会社はコストというものをちゃんと理解していないと思ってしまいます。経費の削減は、一気にやるものではないからです」(『ウォーレン・バフェット 自分を信じるものが勝つ!』)

バフェットにとってコストの削減は、人が朝起きて顔を洗うことと同じようなものです。優れた経営者なら、朝起きて「さて、息でもするか」と考えないように、コスト削減も当たり前のようにできて当然のことだというわけです。

自社の経費は同業他社平均の250分の1

その言葉通り、バークシャー・ハザウェイの経費はとても低く抑えられています。マンガーによると、それは同業他社の平均の250分の1程度であり、同社より低いところは他にないといいます。そのため、破格の値で売り出されていたビルを買って本社を移転するという計画が持ち上がった時も、豪華な事務所に移るのは社員や傘下の企業に良い影響を与えないという理由で中止をしています。

桑原晃弥『ウォーレン・バフェットの「仕事と人生を豊かにする8つの哲学」』(KADOKAWA)
桑原晃弥『ウォーレン・バフェットの「仕事と人生を豊かにする8つの哲学」』(KADOKAWA)

バフェットにいわせれば、倹約の精神は私生活から始まります。1996年の株主総会でこんなことをいっています。「バークシャーの取締役は昨年、合計で100ポンドの減量に成功しました。少ない役員報酬で生活していこうと努力した結果にちがいありません」(『ウォーレン・バフェット 自分を信じるものが勝つ!』)

1993年、ABCの会長トーマス・マーフィーと一緒にドラマ『オール・マイ・チルドレン』に通行人役としてバフェットが出演した時のことです。出演料として一人300ドルの小切手を受け取ったところ、マーフィーは「この小切手は額に入れて飾っておこう」と喜んだのに対し、バフェットはこういいました。「私は小切手の写しを飾ることにしよう」(『ウォーレン・バフェット 自分を信じるものが勝つ!』)