「お金がすべて」という価値観を忌み嫌う

バフェットはまた、ウォール街が抱える問題をこう指摘しています。

「巨大な市場が、金で人の価値を判断するような人々を惹きつけています。どれほど金を持っているか、去年どれほど稼いだかということを尺度にして人生を歩んでいくなら、遅かれ早かれ厄介な問題に巻き込まれるでしょう」(『スノーボール』)

バフェットは会社のために働いて損害を出すのは理解できると話しています。しかし、私利私欲のために不正を働き、会社の評判を傷つけるような行為は絶対に容赦しないと明言しています。

日本でもそうですが、自分を批判する人たちに対して、「私はあなたたちよりもはるかに稼いでいます」「あなたたちの何十倍の税金を払っています」などとさも特権階級であるかのようなことを平気で口にする人たちがいますが、その先にあるのはバフェットのいう「厄介な問題」だけ──。バフェットにとって、ウォール街的な「お金がすべて」という尺度は、最も忌み嫌うものの一つなのです。

バフェットとビル・ゲイツの共通点

ビル・ゲイツもウォーレン・バフェットも、非常に早い時期からビジネスの才能を開花させ、多くのお金を稼ぐことに成功しました。しかし、2人とも私生活という点に関しては、その稼ぎから比してかなり質素な部類に入るのではないでしょうか。

マイクロソフトの若き経営者として成功したビル・ゲイツの秘書はゲイツお気に入りの食事をいつでも注文できるように電話に短縮番号を入れていましたが、相手は「バーガーマスター」というファーストフード店であり、頼むのは決まってハンバーガー、フライドポテト、そしてチョコレートシェイクでした。社員たちと洒落たレストランに行き、社員のためには高級ワインを頼みますが、ゲイツが頼むのはやはりハンバーガーでした。

若き成功者の姿をカメラに収めようとした時も、ゲイツお気に入りのセーターにはいくつも穴があいていて、どの角度からも撮ることができず、仕方なしにセーターを脱いだらシャツもしみだらけだったというのもよく知られた話です。

仕事には厳しく、お金にもうるさかったゲイツですが、自分が裕福な生活をすることにはさしたる関心はありませんでした。稼いだお金について次のようにいっています。「5000万ドル稼いだ人がいたとして、それをただ家を建てたり、自分たちのために使ったとしたら、それはただの消費です。富を貧しい人に分配せず、自分たちの目的のためだけに使っているからです」(『バフェット&ゲイツ 後輩と語る』)