お金を正しく使うことのほうが難しい

こうした考え方はゲイツとバフェットに共通するものです。バフェットもこんなことを話しています。「その気になれば、1万人の人を雇って私の自画像を毎日描かせることもできるでしょう。それでもGNP(国民総生産)は成長します。しかし、それによって得られる生産物の価値はゼロです」(『ウォーレン・バフェット 自分を信じるものが勝つ!』)

さらに、「お金を稼ぐのは簡単です。むしろ、使うほうが難しいと思います」(『ウォーレン・バフェット 自分を信じるものが勝つ!』)とも語っています。

お金を使うことの難しさを知るバフェットが選んだのが、慈善事業のためにお金を使うことであり、ゲイツと手を組むことでした。

2011年、アメリカのウォール街を中心に行われたデモでキーワードの一つとなったのが、「1%対99%」です。現在では「1%」どころか、「0.5%」ともいわれていますが、この世の中にはほんの少数の圧倒的に裕福で恵まれた人たちと、それ以外の99%の人がいるという閉塞感や怒りからの抗議の言葉といえます。

「残りの99パーセントの人間のことを考える義務がある」

バフェットは両親から莫大な遺産を受け継いだわけではありませんが、それでも「生まれた場所と時期がすばらしかった」(『スノーボール』)と、自らの幸運に早くから感謝しています。

たしかにバフェットは投資の才能に溢れていますが、もしアメリカ以外の国、たとえば発展途上国の小さな村などに生まれたとしたら、そうした才能が見出されることも花開くことも、その可能性は大きく下がったでしょう。

バフェットは自分の成功はこうした運によるものだと話しています。教育熱心な両親に恵まれ、尊敬すべき人たちと出会い、自分が大好きな仕事をすることができた結果が世界有数の資産を築かせることになった――それを自覚しているからこそ、自分たちのような人間は、そうではない人たちのことを考え、その人たちのために何かをすることが必要だと考えています。

「幸運な1パーセントとして生まれた人間には、残りの99パーセントの人間のことを考える義務があります」(『バフェットの株主総会』)といって、たとえばアメリカにおける税制の不公正を正すべきだと新聞に自らの考えを発表していますし、「私に言わせれば、この国の税制はあまりにもフラットです。率直に言って、ビルや私は、もっと高い税率を課せられるべきなんです」(『バフェット&ゲイツ 後輩と語る』)とも話しています。