「寝ているはずなのに眠い」は睡眠障害を疑う

きちんと最適な時間の睡眠を取っていても、「日中、生理的に眠くなる時間」というものがあります。

その時間帯は起床から7~8時間後で、クロノタイプが中間型の人だと、だいたい正午から午後2時くらいまでのあいだです。この現象は、「ポストランチ・ディップ」とか「アフタヌーン・ディップ」と呼ばれています。

食事の影響を除いても、もともとの生体リズムでこの時間帯には眠気が生じやすいといわれています。自然な生理作用ですからその時間帯に多少の眠気を感じることにはなんら問題はありません。ただ、このときの目安として、10分から20分程度の仮眠を取ってもまだ眠気が強く残るようであれば、睡眠不足と考えていいでしょう。

それから、たくさん眠っているはずなのに日中も眠い、という人もいるかもしれません。わたしも睡眠外来でそのような人にたくさん出会ってきました。

そういう人の場合は、睡眠中にいびきをかいたり、呼吸が止まっていたりすることが多く、「睡眠時無呼吸症候群」になっている可能性が考えられます。

いびきや無呼吸は太っている人の病気と思われがちですが、実際は痩せている人でも、顔の骨格の影響で無呼吸になる人が存在します。

いびきの有無やその程度は、スマホのアプリなどを利用することでも簡単に調べることができます。まずは参考までに、自分が寝ている時間にアプリを使って録音してみるといいでしょう。

また、日本人の600人にひとり程度の割合で、突然病的な眠気に襲われる「ナルコレプシー」という病気の人がいることがわかっています。

他に、寝ているあいだに腕や脚が動いてしまう「周期性四肢運動障害(PLMD:Periodic Limb Movement Disorder)」といった睡眠障害の問題を抱えている可能性もあります。

ですから、しっかり眠っているつもりなのに日中に眠気に襲われることが続くなら、睡眠専門のクリニックを受診することをおすすめします。

なお、いびきの簡易検査は、保険診療を使って3000円程度で受けることができます。

良質な睡眠が得られているかのチェック方法

みなさんが良質な睡眠を得られているかどうかを確認できる、具体的な基準もあります。

これは、睡眠研究で有名な、アメリカのスタンフォード大学の研究で示されているものです。自分の睡眠について次のチェック項目を満たしているかを確認してみてください。

□ベッドに入って30分以内に眠れる
□睡眠中、起床までに起きる回数が1回以下
□「眠っている時間」が「ベッドのなかで過ごす時間」の85%以上

「さあ、寝よう」とベッドに潜り込んだのに、何度も寝返りを打ってなかなか眠れないという人もいるはずです。そういう人の場合、たとえベッドに入ってから目が覚めるまでの時間は6時間だったとしても、実はあまりいい睡眠が取れていない可能性が高いのです。

それから、前回の記事で解説した「クロノタイプ」も重要です。自分のクロノタイプと、眠る時間帯が合っているかを確認してみてください。

遺伝的に「強い朝型」の人が、夜勤明けの人のように早朝から眠るのはそもそも難しいことですし、同様に、「強い夜型」の人が午後10時にベッドに入ったとしても、悶々と眠れない時間を過ごすだけです。

もちろん、何度も申しあげるように、現在就いている仕事や、プライベートの事情ですぐに劇的な生活スタイルの改善を図るのは難しいケースがほとんどでしょう。

まずは、本来のクロノタイプとは異なる生活に順応している自分を労うべきです。そして、あとで詳しく解説する光の調節を意識してみてください。

これからの時代は、長期的な視点で見れば、働き方も生き方そのものもどんどん多様化していきます。ですから、いますぐには無理でも、できるだけ自分のクロノタイプとライフスタイルを合わせていくようにすることも一考の価値があると思うのです。

(イラストレーション=伊藤美樹)
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