NECの遠藤信博も、56歳と若い。最年少取締役から15人抜きで抜擢され、話題となった。

「前社長の矢野薫(現会長)が、たぶん、清水の舞台から飛び降りるくらいの覚悟で、10歳若いのを、(後継者に)してみようと思ったのでしょう。その思いはしっかり受け止めたい」

<strong>NEC社長 遠藤信博</strong>●1953年11月8日、神奈川県生まれ。81年、東工大院博士課程修了(工学博士)、NEC(日本電気)入社。2003年、モバイルワイヤレス事業部長。10年、現職。
NEC社長 遠藤信博●1953年11月8日、神奈川県生まれ。81年、東工大院博士課程修了(工学博士)、NEC(日本電気)入社。2003年、モバイルワイヤレス事業部長。10年、現職。

遠藤に課せられた使命は明確だ。日本を代表する名門ハイテク企業・NECの復活である。この5年を見ても、売り上げは2006年3月期の4兆9300億円をピークに、10年3月期は3兆5831億円にまで落ち込んだ。利益に至っては、09年3月期に2966億円もの最終赤字を出したこともあって、株主資本は減少し、株主価値を減らしてしまった。リストラクチャリングでも、ライバル富士通に一歩後れをとった感は否めない。

「典型的な衰退企業の流れになっていませんか」と、水を向けると、「特にこの3年は厳しい状況にあったので、その結果だと理解しているが、衰退期に入ったとは思っていない」と答える。

いまNECは12年度(13年3月期)売上高4兆円、営業利益2000億円を目指す中期経営計画「V2012」を掲げている。

注力する分野は、クラウド・サービス、グローバル市場、新規事業の3つである。

ITの主戦場も、いわゆるシステム構築の世界から、クラウド・サービスの時代に移行しようとしている。クラウド・サービスが本格化してきたのは、まさにインターネットという通信網の性能が上がり、ITと通信の融合が進んできたからにほかならない。

この分野では、米IBMをはじめ、グーグル、アマゾンなどのネット発企業から、セールスフォース・ドットコムなど新興企業までが、覇を競う。