※本稿は、河合薫『THE HOPE 50歳はどこへ消えた?』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
報われない時代
今、「私」たちが生きているのは、魑魅魍魎が跋扈し、幸せへの道しるべがありそうでない複雑な社会だ。「自分らしく生きる」という美しい言葉が闊歩するも、何が自分らしさなのかも定かじゃない。
もはや「社会的成功」という言葉が何を意味し、人生に何をもたらしてくれるかさえわからない。単に「個人的資産や収入の多さを意味する言葉ではない」ことはわかる。持てる者が常に豊かというほど簡単じゃないこともわかる。
しかし、ちっとも報われないのだ。普通に、ごくごく普通に「幸せになりたい」と頑張っているのに、ちっともカネは増えず、不安ばかりが膨らんでいく。
削られ続けるサラリーマンの収入
平成元年(1989年)以降、労働者の賃金が減少傾向に転じていることはご承知の通りだ(「平成29年賃金構造基本統計調査」)。OECD(経済協力開発機構)の分析では、1997年を100にした場合、スウェーデンの138.4を筆頭に先進国は軒並み130前後まで上昇しているのに、日本だけが89.7で低賃金先進国を爆走中だ。
退職金も1997年の2871万円をピークに年々下がり続け、2003年には2499万円、13年には1941万円、18年には1788万円まで下がり、20年間でなんと1000万円も減ってしまった(厚生労働省「就労条件総合調査」)。
一方、日本国内の富裕層と超富裕層の割合は、「アベノミクス」が始まったあとの2013年以降、広がり続け、クレディ・スイス「2016年度グローバル・ウェルス・レポート」によれば、日本の超富裕層(純資産5000万米ドル超)は世界最大の伸び率を記録しているという。